[MIS10-P28] 海洋酸性化に対するウニ(Mesocentrotus nudus, Strongylocentrotus intermedius)の成長と棘の骨格組成の変化
キーワード:ウニ、微量元素、海洋酸性化
産業革命以降、大気に放出された人為起源の二酸化炭素(CO2)が海水に溶解することで海洋酸性化が進み、現在多くの海洋生態系への影響が懸念されている。中でも炭酸カルシウム(CaCO3)の殻や骨格を形成する生物にとっては、炭酸イオン濃度が減少するため骨格形成が難しくなり悪影響が及ぶと予測される。しかし、その影響評価がなされていない生物も多い。そこで、本研究では方解石を棘や殻の主成分とするキタムラサキウニ(Mesocentrotus nudus)とエゾバフンウニ(Strongylocentrotus intermedius)を対象とし、酸性化の影響について、棘の化学組成や構造の変化から考察する。
本実験で用いたウニは、以下の5つの二酸化炭素分圧(pCO2, µatm)条件で飼育したものである。(1)2000, (2)1000, (3)700, (4)350 (原海水), (5)250(アルカリ添加区)。各濃度区でウニ5~7個体ずつを個別の飼育瓶に入れ、6ヶ月以上の長期飼育を実施した。殻長と体重は毎月計測を行い、同時に微量元素測定用の棘の採取も行った。その後、棘に含まれるMg, Sr, Caを誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で測定した。また、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて棘の表面および断面構造の観察も行った。
エゾバフンウニ、キタムラサキウニともに、その殻長や体重は、pCO2が高い環境下では成長が減少する傾向が見られた。また両種の棘のMg/Ca比は、高い酸性化条件になるにつれて相対的に高くなっていく傾向があり、特に2000 µatmではその他の飼育区と比べて高い値を示した。種ごとに棘のMg/Ca比を比較すると、キタムラサキウニはエゾバフンウニと比べて平均で約1.4倍高い値を示した。Mg含有量が多い方解石は溶解度も高くなるので、棘のMg/Ca比測定の結果から、キタムラサキウニの棘の方が、今後の海洋酸性化に対して石灰化が起きにくくなることが示唆される。SEMによる棘の観察では、コントロール区である350 µatmで成長した棘の表面は規則正しい筋状の凹凸が見られたが、2000 µatmでは表面に突起が出ていて、荒い構造となっていた。また、ウニの棘の断面は無数の穴が空いたステレオム構造をしていて、250, 350, 700 µatmではおおむねその様子が確認できたが、高pCO2環境下(1000, 2000 µatm)では、ステレオム構造内の隙間が埋められていることが観察された。このことから、高いpCO2環境下では棘の微細構造に異常が生じることが示された。
本実験で用いたウニは、以下の5つの二酸化炭素分圧(pCO2, µatm)条件で飼育したものである。(1)2000, (2)1000, (3)700, (4)350 (原海水), (5)250(アルカリ添加区)。各濃度区でウニ5~7個体ずつを個別の飼育瓶に入れ、6ヶ月以上の長期飼育を実施した。殻長と体重は毎月計測を行い、同時に微量元素測定用の棘の採取も行った。その後、棘に含まれるMg, Sr, Caを誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で測定した。また、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて棘の表面および断面構造の観察も行った。
エゾバフンウニ、キタムラサキウニともに、その殻長や体重は、pCO2が高い環境下では成長が減少する傾向が見られた。また両種の棘のMg/Ca比は、高い酸性化条件になるにつれて相対的に高くなっていく傾向があり、特に2000 µatmではその他の飼育区と比べて高い値を示した。種ごとに棘のMg/Ca比を比較すると、キタムラサキウニはエゾバフンウニと比べて平均で約1.4倍高い値を示した。Mg含有量が多い方解石は溶解度も高くなるので、棘のMg/Ca比測定の結果から、キタムラサキウニの棘の方が、今後の海洋酸性化に対して石灰化が起きにくくなることが示唆される。SEMによる棘の観察では、コントロール区である350 µatmで成長した棘の表面は規則正しい筋状の凹凸が見られたが、2000 µatmでは表面に突起が出ていて、荒い構造となっていた。また、ウニの棘の断面は無数の穴が空いたステレオム構造をしていて、250, 350, 700 µatmではおおむねその様子が確認できたが、高pCO2環境下(1000, 2000 µatm)では、ステレオム構造内の隙間が埋められていることが観察された。このことから、高いpCO2環境下では棘の微細構造に異常が生じることが示された。