日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、千葉 崇(一般財団法人海上災害防止センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)

[MIS11-P03] 北海道当縁川河口域での津波堆積物研究における現生珪藻と新第三紀海成層に由来する珪藻の識別の重要性

*千葉 崇1,2西村 裕一2 (1.一般財団法人海上災害防止センター、2.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

キーワード:現生珪藻群集、新第三紀化石珪藻、当縁川河口域、北海道

北海道当縁川河口域には自然の景観がほぼ残された低湿地が広がっている.この湿地では,古くから地形・地質学的な検討が行われてきた歴史があり,2000年代前半から古津波に関する研究も行われるようになった(七山ほか2003).しかしながら,古地震による環境変化に関する検討は行われていない.一方,この低湿地周辺には新第三紀海成層である大樹層などが広く分布している.特に大樹層は珪藻質塊状シルト岩から成り,新第三紀の海生珪藻が多産することが知られている(嵯峨山2001).従って,当縁川下流域の完新世堆積物から産出する珪藻群集の変化を正確に読み取り,古地震・古津波研究に反映させるためには,現世において珪藻の生体,遺骸を識別しつつそれらの分布を明らかにすること及び絶滅種混入の程度などを明らかにすることが重要になる.
 我々は当縁川下流域の17点において,珪藻群集の分布を明らかにするために調査及び分析を行った.また,大樹層が露出している露頭において1点試料を採取した.調査に当たり,珪藻の生育環境の情報を得るため,調査地点の塩分,pH,EC,粒度,有機物量(LOI),標高の測定を行った.分析では染色法(小杉1985)を用いて珪藻観察用プレパラートを作成し,生体・遺骸の識別をした上で顕微鏡観察を行って同定・計数し,それぞれの分布を比較した.また,大樹層から比較試料を採取して同様に同定・計数した.調査及び分析の結果,当縁川下流域の低湿地におけるPseudopodosira kosugiiなどの現生種の分布と生育環境を明らかにすることができた.また全地点において,最大で2%程度Denticulopsis vulgarisなどの新第三紀海成層由来の種が混入していることを確認することができた.
 本研究の結果は,当縁川下流域において完新世堆積物から産出する珪藻群集を用いて古環境復元を行う場合,少なくとも新第三紀海成層に含まれる珪藻化石を分類してリストを作成し,リストに含まれる珪藻種を群集解析から除く必要があることを示している.