日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 海底~海面を貫通する海域観測データの統合解析

2018年5月21日(月) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:有吉 慶介(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、木戸 元之(東北大学 災害科学国際研究所)、稲津 大祐(東京海洋大学、共同)、高橋 成実(防災科学技術研究所)、座長:永野 憲(JAMSTEC)、市川 香(九州大学応用力学研究所)

10:15 〜 10:30

[MIS13-06] 海洋変動ノイズを低減した海底圧力アレイ記録に基づく海底地殻変動の評価:ヒクランギ沈み込み帯の場合

★招待講演

*村本 智也1伊藤 喜宏2稲津 大祐3日野 亮太4鈴木 秀市4 (1.産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2.京都大学 防災研究所、3.東京海洋大学 海洋資源エネルギー学部門、4.東北大学大学院 理学研究科)

キーワード:海底圧力、非潮汐海洋変動、海底地殻変動

スロースリップイベント (SSE)は通常の地震と比べて、断層に沿ってゆっくりと破壊が進行する現象である。一般的に、沈み込み帯の浅部で発生するSSEの検出は、陸上のGNSS観測点で得られたデータを使うのみでは困難である。海底圧力計を用いた海底測地観測は、海底地殻の鉛直変位を連続的に高い分解能で観測できるという利点があり、近年注目されている。一方で、海底で観測される圧力値には潮汐や非潮汐海洋変動のような海洋変動起源の圧力変化を含んでおり、地殻変動由来の圧力変化との分離が困難である。従来の研究では、隣接する2点間の圧力値の差をとることで、2点に共通する海洋変動起源の圧力変化を取り除いていた。しかし、稠密な観測アレイにおける観測点間の水平距離や設置深度の差に応じた圧力値の相関についてはまだ十分な検討がされていない。本研究では、従来の手法よりさらに精密な海底地殻変動の評価を行う為、稠密な観測アレイにおける観測点間の水平距離や設置深度の差に応じた圧力値の相関を調べた。また、気圧と風(大気擾乱)により引き起こされる波高異常によって生じる圧力異常を単層の球面座標浅水波のモデルに基づいた数値計算によって求めた。本研究では主に2014年6月から2017年6月にニュージーランド北島沖に設置されていた海底圧力アレイ記録を解析に用いた。まず第一に、観測データとモデルの出力を比較し、ヒクランギ沈み込み帯周辺におけるモデルの出力の確からしさを評価した。結果、対象地域において、我々の用いる海洋モデルが地殻変動の評価に十分に機能するということを確かめることができた。次に、モデルによって表現される非潮汐性海面変動成分の影響を取り除いた後、2点間の圧力値の差をとることで、海底地殻変動由来の圧力変動を推定することに成功した。
 結果として、2014年9月-10月のイベント (SSE#1)と2014年12月-2015年1月 (SSE#2)のイベントにおける海底地殻変動の鉛直変位が推定された。これら2つのイベントについて比較を行った結果、これらのイベントの鉛直変位の空間パターンは有意に異なるということがわかった。また、両方のイベントにおいて、沈み込み帯の浅部ではっきりとした海底地殻の鉛直変位が推定された。これらの結果は、2週間から3週間程度の継続時間を持つ、プレート境界の深さ15km以浅で発生する一連の浅部SSEは1年より短い発生間隔で潜在的に繰り返し起きているという可能性を示唆する。