日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 生物地球化学

2018年5月23日(水) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構、共同)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:仁科 一哉柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

10:45 〜 11:00

[MIS14-07] アラスカのツンドラー北方林帯土壌における地化学性と有機炭素の関係

*保原 達1串田 圭司2Kim Yongwon3木庭 啓介4阿江 教治5 (1.酪農学園大学、2.日本大学、3.アラスカ大学フェアバンクス校、4.京都大学、5.龍谷大学)

キーワード:土壌有機炭素、ツンドラと北方林、吸着

陸域土壌は土壌有機物として炭素を多分に含んでおり、地球上の炭素循環に重大な影響を与えうるコンパートメントの一つである。高緯度にあるツンドラおよび北方林の生態系は、低緯度にある他の生態系に比べ、植物よりも土壌に多くの炭素を蓄積している。アラスカ北部では、土壌の酸性度に多様性があり、その多様性が系内の植生や土壌の生化学性などと大きく関連することが知られている。しかしながら、そうした土壌の酸性度が土壌の有機炭素とどう関連するかについてはなお不明な点が多い。本研究では、基岩の風化に関連した地化学性の変化にともない土壌有機炭素が変化することが明らかとなったので、これを報告する。土壌を、北極海岸近くから内陸アラスカまでの南北600kmに及ぶツンドラー北方林帯の12サイトで採取し、これを化学分析して比較した。その結果、鉱質土壌は低いpHの土壌ほど交換態陽イオンが少なく、アルミニウムや鉄の鉱物が多い傾向にあり、風化とそれに伴う陽イオン溶脱ならびにアルミニウムや鉄の残存がこれらの生態系土壌の地化学的な違いをもたらしていると考えられた。土壌に吸着した炭素は、土壌中のアルミニウム、鉄、pH、全炭素と相関があり、また全炭素の30-55%を占めていた。このことは、アラスカの生態系における土壌炭素蓄積は風化に関連した地化学特性の変化、特に増加する吸着性有機炭素に影響を受けていることを示唆する。このようなことは、土壌の有機物吸着テストによっても支持され、非酸性土壌よりも酸性土壌で有機炭素吸着容量が大きかった。これらのことから、アラスカの北方生態系では、風化に関連した土壌の地化学特性の変異は炭素動態やその関連する物質動態の地域特性に大きな影響を与えると考えられる。