日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 生物地球化学

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構、共同)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS14-P07] Sr同位体比と希土類元素組成による京阪神4地点の降水中に含まれる不溶性物質の起源推定

*安藤 涼太1横尾 頼子1石川 尚人2 (1.同志社大学理工学部、2.京都大学院人間・環境学研究科)

キーワード:降水、不溶性物質、黄砂、Sr同位体、希土類元素

京阪神地域で採取された降水中に含まれる不溶性物質(ダスト)について,Sr同位体比(87Sr/86Sr)と希土類元素濃度を分析し,その起源の推定を試みた.調査地は,京都府京田辺市の同志社大学京田辺キャンパス,京都市左京区の京都大学吉田キャンパス,大阪府寝屋川市の同志社香里中学高等学校,兵庫県西宮市兵庫県立西宮今津高等学校の4地点である.試料には2010年1月から2011年12月にかけて,1ヵ月ごとに採取された降水から回収したダストを用いた. ダストの月別の87Sr/86Srは0.7081~0.7171であり,春に高く,夏から秋に低い傾向を示した. 春季のダストの87Sr/86Srは,日本に飛来する黄砂の起源物質である中国黄土の87Sr/86Srに近い値を示した.また,京田辺市において各年の最も高い87Sr/86Sr は,2010年4月に0.7167であり,2011年4月の0.7141より高かった.日本国内での黄砂観測日数は春に多く,また2010年が2011年より多かった.これらのことから,春季に黄砂がダストに含まれ,年によってダストへの黄砂の影響が異なることがわかった.
希土類元素濃度の高い月のダストの元素濃度およびそのコンドライト規格化パターン(希土類元素パターン)は中国黄土によく似ていた.特に京田辺市と西宮市のダストでは,87Sr/86Srと希土類元素濃度の総和(∑REE)が正の相関を示すことから,これら2都市のダストの化学組成には黄砂の影響が顕著に表れるといえる.
希土類元素パターンでは,京阪神4地点の多くの月で負のEu異常を示した.ダストは,正のEu異常を示す斜長石の風化が進んだ土壌,つまり粘土鉱物に由来すると考えられる.京田辺市に次いで,西宮市,京都市左京区,寝屋川市の順に大きい負の異常を示し,87Sr/86Srと∑REEにおいてダストへの黄砂の影響がよくみられた京田辺市と西宮市で粘土鉱物の寄与が大きいことがわかる.
また,ダストの起源に人間活動にともなって排出される物質も考えられた.希土類元素パターンでは,重希土類元素(Gd~Lu)に比べて,軽希土類元素(La~Sm)に富んでいた.京田辺市,京都市左京区,寝屋川市では,87Sr/86Srが低い夏から秋に大きな正のTb異常を示した.ダストのSm濃度に対するLa濃度の比(La/Sm)は,西宮市に次いで寝屋川市,京都市左京区,京田辺市の順で高くなった.これらの希土類元素の特徴は産業廃棄物焼却灰や自動車の排ガスに由来すると考えられ,その影響は地点ごとに異なる.