日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 106 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野、共同)、相木 秀則(名古屋大学)、座長:伊賀 啓太(東京大学 大気海洋研究所)

13:45 〜 14:00

[MIS15-01] 軸流周りのシアーで生成する擾乱の特異値解析

*板野 稔久1 (1.防衛大学校)

キーワード:特異値、特異ベクトル、最適励起、軸流

Bjerknes (1938)の「スライス法」によれば、湿潤大気中の対流では、上昇流域は狭い範囲に限られる一方、それを補償する下降流域は広い範囲で形成されることが予測されている。このような状況は、互いに逆向きの流速を持つ円形の軸流とそれを取り囲む反流から構成される系でモデル化することが可能である。そこでは円筒形のシアー域の存在により、軸対称あるいは非軸対称な擾乱が発生しうるが、湿潤対流中で形成される乱流の成因として、そのようなメカニズムを考えることが可能である。本研究では、そのような現象に着目し、線形の範囲に限定して「円形の軸流とそれを取り囲む反流から構成される系」の安定性を「固有値解析」から調査するとともに、発生する軸対称/非軸対称擾乱の「最適励起」の形を「特異値解析」より明らかにすることを試みた。
「密度一定」および「渦なし」の仮定の下、支配方程式として「Bernoulliの式」と「連続の式」を採用し、速度ポテンシャルを用いて記述した後、これらを一定流速Wを持つ軸流と反流とで構成される基本場の周りで線形化し連立させた。中心と無限遠方で速度ポテンシャルがゼロとなる「境界条件」と、円筒形のシアー部での「接続条件」を考慮すると、その円筒シアー部の半径方向の変位Lに関する2階の常微分方程式が得られる。これをLとその導関数L’を成分とするベクトルX=(LL’)に関する1階の連立常微分方程式系へと整理し直したもの(dX/dt=iJX)を「基本方程式」とした(tは時間、Jは2×2の正方行列)。
系の安定性はJの固有値を調べることで判明する。その一方、「基本方程式」を初期値問題として解き、Xとその初期値X0を結びつける解核行列Mを導出した。これより、M*MおよびMM*の固有ベクトルとして前方特異ベクトルと後方特異ベクトルを、またそれらの固有値の平方根として特異値を解析的に導出した(M*Mの随伴行列)。なお、本事例では、「基本方程式」に現れる行列Jが非正規であるため、最適励起された「特異モード」は、最大成長率を持つ「固有モード」より大きい成長がみられた。