[MIS15-P01] 組成対流の熱的安定成層への貫入について
キーワード:熱伝導率、熱フラックス、組成フラックス、運動エネルギー生成
自然界には対流層と安定成層が鉛直方向に隣り合っている状況がしばしば出現する. 例えば太陽の対流層の下側には輻射によるエネルギー伝達が卓越している放射層と呼ばれる成層安定な層が存在している. 地球型惑星大気は一般に地面付近が成層不安定で対流が発達している対流圏の上側に成層圏と呼ばれる安定成層が存在している. 安定成層と不安定成層が鉛直方向に隣接しているとき, 不安定成層内で発生する対流がどの程度安定成層に貫入し侵食するかが最終的な密度成層構造の形成に大きく影響する.
地球の中心核でも同じような議論がなされてきている. 中心核は外側のマントル対流により冷却されることにより流体運動が内部で駆動されていると考えられている. 核全体の冷却に伴い凝結固化していく内核からは, 核の主成分である鉄ニッケルに混じっている酸素や硫黄などの軽成分が内核に取り込まれずに外核下面へと放出される. この軽成分による組成対流が外核内の流体運動を駆動し, その結果として地球磁場が生成維持されていると考えられている. 外核上部の冷却によっても熱対流が駆動されうる. しかしながら近年の高圧実験や第一原理に基づく物性計算により, 外核の熱伝導率が従来より大きな値であることが提唱されている. その場合, マントル対流により奪われる熱流を十分に熱伝導により輸送することができて, 熱的に安定成層が形成されることが示唆されている. このような外核上部の安定成層が下面からの組成対流で混合され破壊されてしまうのか, あるいは上部の安定成層が維持されて, その下側だけで対流が生じているのかが, 外核内の熱組成構造を定める上での重要な流体力学的問題となっている.
そこで本研究では, 熱的な安定成層に対して下面から軽成分を注入する状況での, 2 成分系 2 次元ブシネスク流体の数値実験を行い, 発生する組成対流がどの程度の厚さまで安定成層を混合するのかを観察し, 理論的な解釈を試みることで熱的安定成層に対する組成対流の貫入厚さの理論的な予測法を見出すことを目指した.
熱組成対流がどこで発生できるかを定量的に判断する基準として, われわれは熱的および組成のどちらにも起因する浮力による仕事率(運動エネルギー生成)を考案した. 仕事率は熱フラックスに比例する項と組成フラックスに比例する項から成っている. 仕事率が正である領域は浮力により運動エネルギーが生成できるので対流が発生可能であると判断できる. 逆に仕事率が負の領域では運動エネルギーが生成できないため, 安定成層が形成される可能性があると判断できる.
数値実験によって得られた組成対流の発達する領域は, 全層が対流によって混合されていると仮定したときの運動エネルギー生成率が正となる領域でよく説明することができる.
地球の中心核でも同じような議論がなされてきている. 中心核は外側のマントル対流により冷却されることにより流体運動が内部で駆動されていると考えられている. 核全体の冷却に伴い凝結固化していく内核からは, 核の主成分である鉄ニッケルに混じっている酸素や硫黄などの軽成分が内核に取り込まれずに外核下面へと放出される. この軽成分による組成対流が外核内の流体運動を駆動し, その結果として地球磁場が生成維持されていると考えられている. 外核上部の冷却によっても熱対流が駆動されうる. しかしながら近年の高圧実験や第一原理に基づく物性計算により, 外核の熱伝導率が従来より大きな値であることが提唱されている. その場合, マントル対流により奪われる熱流を十分に熱伝導により輸送することができて, 熱的に安定成層が形成されることが示唆されている. このような外核上部の安定成層が下面からの組成対流で混合され破壊されてしまうのか, あるいは上部の安定成層が維持されて, その下側だけで対流が生じているのかが, 外核内の熱組成構造を定める上での重要な流体力学的問題となっている.
そこで本研究では, 熱的な安定成層に対して下面から軽成分を注入する状況での, 2 成分系 2 次元ブシネスク流体の数値実験を行い, 発生する組成対流がどの程度の厚さまで安定成層を混合するのかを観察し, 理論的な解釈を試みることで熱的安定成層に対する組成対流の貫入厚さの理論的な予測法を見出すことを目指した.
熱組成対流がどこで発生できるかを定量的に判断する基準として, われわれは熱的および組成のどちらにも起因する浮力による仕事率(運動エネルギー生成)を考案した. 仕事率は熱フラックスに比例する項と組成フラックスに比例する項から成っている. 仕事率が正である領域は浮力により運動エネルギーが生成できるので対流が発生可能であると判断できる. 逆に仕事率が負の領域では運動エネルギーが生成できないため, 安定成層が形成される可能性があると判断できる.
数値実験によって得られた組成対流の発達する領域は, 全層が対流によって混合されていると仮定したときの運動エネルギー生成率が正となる領域でよく説明することができる.