日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 火山噴煙・積乱雲のモデリングとリモートセンシング

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 106 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、前野 深(東京大学地震研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、座長:佐藤 英一(気象研究所)

11:00 〜 11:15

[MIS16-02] Kuバンド高速スキャンドップラーレーダにより観測され桜島火山噴煙柱の三次元構造

*真木 雅之1小堀 壮彦1Kim Yura1佐藤 英一2 (1.鹿児島大学、2.気象庁気象研究所)

キーワード:レーダ、火山噴煙、3次元表示

火山噴煙柱の三次元構造を調べるために桜島黒神川左岸に設置された鹿児島大学のKuバンド高速スキャンレーダによる観測を行った.Kuバンド高速スキャンドップラーレーダ(Ku-band Rapid Scanning Doppler Radar: KuRAD)は,火山噴火に伴って発生する時間変化の激しい噴煙柱や火山灰雲の三次元構造を調べるために2017年3月に鹿児島大学に導入された.表1にKuRADの主な仕様を示す.図1はKuRADによる桜島噴煙柱観測モードを説明する模式図である.KuRADの主な観測対象は噴煙柱,火山灰雲,降灰及び降水,火砕流などである.それぞれの現象を効率よく観測するために、噴火検出モード,噴煙柱観測モード,火山灰雲観測モードの3種類のアンテナスキャンモードを使い分けている。噴火検出モードは高い時空間分解能で火口直上をアンテナの方位角と仰角を固定して連続観測するモード(FIXと呼ぶ)である。噴火に伴い形成されるガス推進領域のドップラー速度および反射因子から噴火の有無や噴煙柱崩壊型の火砕流の発生を監視する。噴煙柱観測モードは、噴煙柱のガス推進領域から浮力領域を観測するモードで火口直上の噴煙柱の形成過程を比較的高い時空間分解能で観測する。このため、低仰角のSPIRALスキャンを採用している。火山灰雲観測モードは噴煙柱から火山灰雲の形成までの全過程を観測するモードである。時間分解能は前の二つのモードには及ばないが、1分間で噴煙柱と火山灰雲の全体の内部構造を三次元的に観測することができる。このほかのモードとして仰角を固定して方位角を変えながら観測するPPI(Plan Position Indicator)スキャンを用いる観測モードがある。このモードは、大気下層を広域的に観測するのに適しており、降水の有無に利用可能である。PPIスキャンと同様に一般的なスキャンモードとしてRHI(Range Height Indicator)スキャンがある。RHIスキャンは方位角を固定して仰角を変えながら鉛直断面を観測する方法で、噴煙柱の鉛直構造を5~10秒程度で調べることができる。残念ながらKuRADにはRHIスキャン機能はないが、その代わりに、SPIRALスキャンから得られる三次元データから鉛直断面を作成する。この方法の利点は、RHIスキャンが方位角を特定する必要があるのに対して、任意の方向の鉛直断面をとることが出来る点である。ただし、SPIRALの観測に要する時間が1分であることから、鉛直断面の下層と上層の観測時間には最大で1分の差が生じることに注意する必要がある。

2017年4月28日から6月18日の観測期間中,噴火の回数は約80回ありそのうち爆発的噴火は13回であった(鹿児島地方気象台火山班)。噴煙高度が3000m以上の噴火は10回あり、最も噴煙高度が高かったのは5月2日3:20に発生した噴火で噴煙は火口から高度4000mに達した。図1に三次元解析ツール(ANT3D)を用いて解析された噴煙柱の発達の様子を示す.