日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 水惑星学

2018年5月22日(火) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所、共同)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、臼井 寛裕福士 圭介

10:15 〜 10:30

[MIS18-06] 粘弾性緩和で探る冥王星の氷地殻の物性

★招待講演

*鎌田 俊一1Nimmo Francis2 (1.北海道大学 創成研究機構、2.カリフォルニア大学サンタクルーズ校)

キーワード:冥王星、氷地殻、粘弾性

本研究では、冥王星の氷地殻の物性を粘弾性変形の観点から制約することを目指す。冥王星の表面は氷で覆われているが、その地下には全球的な海が広がっていることがNew Horizonsの画像から示唆されている。その根拠の一つが、巨大なクレーターである「スプートニク平原」がカロンとの潮汐軸付近に位置していることである。もし地下に海がないのであれば、真の極移動によって平原は極付近にあるはずである。現にそうなっていないのは、平原の下では氷地殻が薄く、内部海が分厚くなっており、正の重力異常を持つためだと考えられる。しかし、この氷地殻下端の地形は粘性流動によって徐々に平らになっていくはずである。この流動の時間スケールがスプートニク「盆地」形成からの時間を下回らないということから、氷地殻の粘性率について制約することができる。Kamata & Nimmo (2017)のアプローチを踏襲した粘弾性変形計算を行った結果、流動の時間スケールが10億年以上となるためには、氷地殻下端での粘性率が >1018 Pa sでなければならないことが分かった。これは、冥王星の氷の基準粘性率が地球の氷のそれよりも数桁大きいか、あるいは内部海の温度が非常に低温であることを示唆している。