日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 遠洋域の進化

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)、栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、尾上 哲治(熊本大学大学院自然科学研究科、共同)、木元 克典(独立行政法人海洋研究開発機構)

[MIS20-P02] 北海道富良野-芦別地域に分布する空知層群・蝦夷層群の層序と海洋プレートの復元

*幸田 龍星1植田 勇人1 (1.新潟大学)

キーワード:空知-エゾ帯、海洋プレート層序、ジルコンのU-Pb年代

北海道中軸部の空知-エゾ帯は,ジュラ系-下部白亜系の空知層群と,白亜系の蝦夷層群で構成される.空知層群の下部は主に玄武岩溶岩からなる.上部は珪質泥岩と凝灰質珪質泥岩を主体とし,玄武岩溶岩やドレライトを挟在する.蝦夷層群は前弧堆積体である.

 空知層群の成因について,おもに下部の岩石学的性質から様々なモデルが提唱されているが未だ統一見解が得られていない.そのため本研究では,空知層群下部のみの研究で起源を明らかにするのは限界があると考え,富良野・芦別地域奈江川周辺における空知層群下部から蝦夷層群下部における層序と年代,砕屑物組成を検討した.

 本研究では,新たに空知層群を5つの層(下位よりS1: 玄武岩溶岩層,S2a: 火山角礫岩層,S2b: 火山砕屑性砂岩・泥岩互層,S2c: 珪質泥岩・凝灰岩互層,S2d: 玄武岩溶岩等を挟む凝灰質珪質泥岩・凝灰岩互層),蝦夷層群下部を2層(Ly1:厚層理砂岩,Ly2:泥岩・泥がち互層)に再区分した.S1~S2c下部が遠洋性、S2c上部~S2dは半遠洋性、Ly1以降は陸源性の地層である.S1bからTithonina-Berriasianの放散虫,S2b砂岩から130Ma後半,S3凝灰岩から120Ma後半, Ly1砂岩から120Ma前半のジルコンのU-Pb年代が得られた.これらの年代は,既存の放散虫化石年代とも調和的である.

 砕屑性単斜輝石の組成から,S2aの火山岩角礫は,単斜輝石の組成から,MORB的なS1玄武岩の再堆積物, S2bの火山砕屑性砂岩は島弧から供給された砕屑物であり,いずれも遠洋域に堆積したと考えられる.一方,S2dの凝灰岩は原生代ジルコンをも含み,半遠洋域において大陸から供給された火山灰と考えられる.Ly1砂岩は原生代ジルコンを含む陸源性の粗粒砕屑岩である.

 以上の遠洋性から半遠洋性を経て陸源性への岩相変化は一種の海洋プレート層序とみなせるため,空知層群がユーラシア大陸とは別の運動をしていたプレートの一部であったことが示唆される.一方空知-エゾ海盆に対しては三畳紀以前の古い海洋地殻が東側から沈み込み,神居古潭帯やイドンナップ帯の付加体を形成した.また,同海盆近傍の遠洋域に島弧があったと考えられることからも,空知層群は付加体を形成した太平洋の主要な海洋プレートとは海溝によって隔てられていた可能性が高い.以上から空知層群は,ジュラ紀末~白亜紀初頭の北西太平洋に,ユーラシア大陸や太平洋の海洋プレートのいずれとも別個の海洋プレートが存在していたことを示唆する.