[O02-P13] 地球影 ～誰彼刻を追ふ～
キーワード：地球影
はじめに
地球の影とは夜のことである。地球の影に月が入ると月食として観測されるが、地球の影は月食でないときにも日常的に姿を見せている。この影の端、夜と昼との境が大気に映ったものを特に地球影と呼ぶ（図1）。日の出・日没前後、太陽の向かい側の空の地平線近くに、青と桃色の帯が見えることがあり（図2）、青い帯が地球影、桃色の帯がビーナスベルト（以下VB）と呼ばれる。地球影は文字通り地球の影が、VBは、夕焼けと同じ原理で太陽光が散乱されて赤成分のみになったものが大気に投影されていると考えられている。本研究では、地球影が本当に地球の影であるのか、また地球影とVBがどのようにして起きている現象なのか、理論計算と観測から検証と解明を試みた。
方法
まず計算において、観測点上空を覆うように、一定の仰角・方位角・地表からの大気高度で計算点を設定した（図3）。この計算点に光が当たっているか、どの程度当たっているのかを時間ごとに算出し、光の当たり具合で計算点の大きさを変え、方位角ごとにグラフにプロットした（図4）。観測点は図中左下であり、右の方向を見ている状態である。
仰角ω_1： 0～45°/ 1° Pitch
方位ω_2： 0～180°/ 10° Pitch
高度h ： 0～15km / 0.25km Pitch
～20km / 0.5km Pitch
～30km / 1km Pitch
次に以下の条件で観測を行った。
撮影日 2018年1月14日
時刻 6：31～7：03（日の出6：50）
撮影間隔 10秒
場所 神奈川県 横浜市 西寺尾の丘公園
E139° 38' 54'' N35° 30' 02'' （Google Earthより取得）
使用機材 Nikon D7200 + AF-S NIKKOR 80-200mm f/2.8D
最後に、これらの結果を比較した。
まず観測地点から富士山は南を0°として西の方角80°、仰角約2.2°であるため、方位角80°の計算点のグラフと写真の富士山の方向を比較し、地球影・VBの高さ（仰角）と光の当たっている計算点の分布から、それぞれに影響している大気高度を推測する。ここで実際の縦横比のグラフは奥行きが長いので、対数軸をとった。
結果（図5）
6:40
地球影とVBの境は仰角約4°。仰角4°以下（影）を見ると、6km以下には光が当たっておらず、15kmまで不完全な当たり方である。
6:44
地球影とVBの境は仰角約3°。仰角3°では、1.5km以下には光が当たっておらず、4kmまで不完全な当たり方である。仰角4・5°では、3kmまで完全に光が当たっており、これらの光が当たっている部分の高度が大幅に低くなった。
6:48
地球影とVBの境は仰角約1.5～2°程度に見えるが、明確な影としては見えない。ほぼ全ての点に光が当たっている。また富士山頂にも光が当たり，ピンクになり始める。ここでグラフの仰角2°・高度3kmを見ると、6:46では不完全な当たり方だった（A_nの半径が小さい）が、この6:48では完全に光が当たっている（A_nの半径が最大になりA_nの間隔が縮まった）（図6）。
結論
地球影が見えている部分の空には光が当たっていない。
→ 地球影は本当に地球の影である。地球影は地球の影が大気に投影されて見えている。
ビーナスベルトが富士山頂にさしかかった時、山頂に陽が差し、桃色に染まる（06:48）。
→ 夕日と同じように、太陽側の大気で散乱されてピンク色になった光が大気を照らし、ビーナスベルトとして見えている。
ビーナスベルトが見えている部分の空で、光が当たっている最低の大気高度は1～12km。
→ 参考文献で言われている12～50kmよりも低い。
今後の展望
「影とVBの境」について、画像中の明るさなどではっきりと定義する。これに加えて、計算・観測での方位角の範囲を広げ、影全体の概形を掴む。また、今回は大気の屈折率を考慮していないので、計算と観測では誤差が生じているはずである。この誤差の程度を検証し、小さくしていく。
参考文献・使用ソフト一覧
地球は本当に丸いのか？ 武田康男 草思社 2017年6月22日
Microsoft Excel 2010
Graph-R version 2.41
Adobe Photoshop Elements 14
AstroArts ステラナビゲータ Ver.9.2c
地球の影とは夜のことである。地球の影に月が入ると月食として観測されるが、地球の影は月食でないときにも日常的に姿を見せている。この影の端、夜と昼との境が大気に映ったものを特に地球影と呼ぶ（図1）。日の出・日没前後、太陽の向かい側の空の地平線近くに、青と桃色の帯が見えることがあり（図2）、青い帯が地球影、桃色の帯がビーナスベルト（以下VB）と呼ばれる。地球影は文字通り地球の影が、VBは、夕焼けと同じ原理で太陽光が散乱されて赤成分のみになったものが大気に投影されていると考えられている。本研究では、地球影が本当に地球の影であるのか、また地球影とVBがどのようにして起きている現象なのか、理論計算と観測から検証と解明を試みた。
方法
まず計算において、観測点上空を覆うように、一定の仰角・方位角・地表からの大気高度で計算点を設定した（図3）。この計算点に光が当たっているか、どの程度当たっているのかを時間ごとに算出し、光の当たり具合で計算点の大きさを変え、方位角ごとにグラフにプロットした（図4）。観測点は図中左下であり、右の方向を見ている状態である。
仰角ω_1： 0～45°/ 1° Pitch
方位ω_2： 0～180°/ 10° Pitch
高度h ： 0～15km / 0.25km Pitch
～20km / 0.5km Pitch
～30km / 1km Pitch
次に以下の条件で観測を行った。
撮影日 2018年1月14日
時刻 6：31～7：03（日の出6：50）
撮影間隔 10秒
場所 神奈川県 横浜市 西寺尾の丘公園
E139° 38' 54'' N35° 30' 02'' （Google Earthより取得）
使用機材 Nikon D7200 + AF-S NIKKOR 80-200mm f/2.8D
最後に、これらの結果を比較した。
まず観測地点から富士山は南を0°として西の方角80°、仰角約2.2°であるため、方位角80°の計算点のグラフと写真の富士山の方向を比較し、地球影・VBの高さ（仰角）と光の当たっている計算点の分布から、それぞれに影響している大気高度を推測する。ここで実際の縦横比のグラフは奥行きが長いので、対数軸をとった。
結果（図5）
6:40
地球影とVBの境は仰角約4°。仰角4°以下（影）を見ると、6km以下には光が当たっておらず、15kmまで不完全な当たり方である。
6:44
地球影とVBの境は仰角約3°。仰角3°では、1.5km以下には光が当たっておらず、4kmまで不完全な当たり方である。仰角4・5°では、3kmまで完全に光が当たっており、これらの光が当たっている部分の高度が大幅に低くなった。
6:48
地球影とVBの境は仰角約1.5～2°程度に見えるが、明確な影としては見えない。ほぼ全ての点に光が当たっている。また富士山頂にも光が当たり，ピンクになり始める。ここでグラフの仰角2°・高度3kmを見ると、6:46では不完全な当たり方だった（A_nの半径が小さい）が、この6:48では完全に光が当たっている（A_nの半径が最大になりA_nの間隔が縮まった）（図6）。
結論
地球影が見えている部分の空には光が当たっていない。
→ 地球影は本当に地球の影である。地球影は地球の影が大気に投影されて見えている。
ビーナスベルトが富士山頂にさしかかった時、山頂に陽が差し、桃色に染まる（06:48）。
→ 夕日と同じように、太陽側の大気で散乱されてピンク色になった光が大気を照らし、ビーナスベルトとして見えている。
ビーナスベルトが見えている部分の空で、光が当たっている最低の大気高度は1～12km。
→ 参考文献で言われている12～50kmよりも低い。
今後の展望
「影とVBの境」について、画像中の明るさなどではっきりと定義する。これに加えて、計算・観測での方位角の範囲を広げ、影全体の概形を掴む。また、今回は大気の屈折率を考慮していないので、計算と観測では誤差が生じているはずである。この誤差の程度を検証し、小さくしていく。
参考文献・使用ソフト一覧
地球は本当に丸いのか？ 武田康男 草思社 2017年6月22日
Microsoft Excel 2010
Graph-R version 2.41
Adobe Photoshop Elements 14
AstroArts ステラナビゲータ Ver.9.2c