日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] ポスター発表

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

[O02-P34] 「北西太平洋岸におけるプラスチック海洋汚染の状況」

*中屋敷 一刀1、*小西 小雪1、*佐藤 優羽1、*田島 寿美香1、*吹切 亮介1、*中塚 康介1 (1.マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニア)

キーワード:北西太平洋岸、海ごみ、マイクロプラスチック

プラスチックによる海洋汚染の状況を知るため、身近な地域から調べ始めることとした。八戸港は太平洋に面し、青森県南部の主要都市のひとつである八戸市に位置する県内最大規模の港湾である(図1)。また八戸港は、日本を代表する八戸漁港を有し、東北地方では仙台塩釜港に次ぐ工業港・国際貿易港でもある。今回調査地点とした蕪島海岸は、八戸港地区の東部に位置し、外洋に面する防波堤の開口部に位置するため太平洋の波が打ち寄せる。またこの地域は、2017年8月18日に恵比寿浜で実施した大型ごみ調査から、近隣河川(馬淵川・新井田川)から運びこまれるごみも流れ着くと考えられる。

 2018年3月10日に蕪島海岸で2cm以下のプラスチックごみの採集を行った。調査地は、夏期には海水浴場として使用される砂浜で、全長が約137m、調査時の汀線からセメント護岸までの最大距離は28m、調査面積は約3,540平方メートルであった。また大潮の満潮や高波の際には護岸まで波が上がる。当日の満潮は7:38で潮位110cm、干潮は15:36で潮位38cmであった。プラスチックごみの採集は、参加した12名が汀線に並行に1m間隔で並び、海岸の端から反対側の端まで並行を保って前進し、目視で確認できる2cm以下のプラスチックごみを全て拾う方法で行った。その結果、711個のサンプルを採集することができた。またサンプルは、打ち上げられた海藻や木片ごみの周囲と汀線近くがやや多い以外に偏りは無く、ほぼ均一に調査地に分布していた。

 採集したサンプルは全て、水洗して砂を落とし乾燥の後、最大長を測定し、形と色、表面の状態を記録してから、比重による分別方法でプラスチックの素材を推定した。比重による分別方法は、2017年9月16日に八戸港へ寄港した海洋深部探査船「ちきゅう」ラボでの実習で学んだ方法を応用した。これは、比重の異なる液にサンプルを浸し、浮くか沈むかで比重を測定し、プラスチックの素材を分別する手法である。 

 比重による分別方法で推定されたプラスチック素材について、素材別件数と割合を図2、各素材のうち最も多く見られた色とその件数を表1、素材別の大きさ分布を表2に示す。長辺が31mm以上のサンプルは、サンプリング後に水洗・乾燥後、最大長を測定するために伸ばした繊維とキャップ状のサンプルである。比重1.01~1.02のサンプルは、ナイロン12とした。また、薄い剥片あるいはフィルム状のポリエチレンが約51件あった。

 サンプル中で最も多い緑色のポリエチレンは農業や園芸用の用具が、次に多い白い発泡スチロールは魚箱が、それぞれ元となっていると考えられる。これは、近隣河川流域で行われる農業と調査地周辺で漁業が盛んであるという、八戸市の地域的特性に原因すると言える。また環境中に排出されたプラスチックごみが砕けて小さくなると、大きなごみとは動きが異なるようになると考えた。以上と八戸湾の地形、気象庁による2018年2月下旬の旬平均海流から、蕪島海岸の海ごみは八戸市と近隣河川の周辺市町村から流入したもので、八戸湾内を漂ううちに砕けてマイクロプラスチックとなり、時化や大潮の時に外洋に流出すると考えた。



謝辞

 本発表にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)島村道代調査役・小俣珠乃技術主任をはじめ、八戸市、八戸市教育委員会、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、多くの関係機関のお世話になった。また地球深部探査船「ちきゅう」ラボでの実習では、隅々まで行き届いた配慮をして頂き、安全かつ快適に実習することができた。記してここに謝意を表する。



参考文献
気象庁:旬平均海流、親潮域、2018年2月下旬(http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/jun/current_HQ.html, 2018年3月22日参照).