日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] ポスター発表

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

[O02-P72] 地震波形の地域比較からみえてくること

*下中 晴矢1、*中西 希天1、*林田 天1 (1.大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎)

キーワード:地震、大森の距離公式

1.研究背景
 一般的に地震における観測点から震源までの距離と初期微動継続時間は比例の関係にあることは広く知られている。この二つの関係を表した式を「大森の距離公式」といい、Dを震源からの距離、tを初期微動継続時間とし、比例定数kを用いて、D=ktと表される。しかし、大森の距離公式における比例定数k(以下大森定数)の正確な値がないことは、一般にはあまり知られていない。例えば、中高の教科書においても教科書会社によって大森定数の値が異なっている。

2.研究目的
 前年度は「大森定数は地域ごとに値が違うのではないか」という仮説をたて、それを検証した結果、仮説を立証することができた。今年度はそれを引き継ぎ、前年度よりも地震波形データの読み取り件数を増やし、結果を強固なものにするとともに、どのような条件が大森定数の値に影響を与えるのかを明らかにしようと研究した。

3.研究手法
(1) 地震波形データ(2014年10月1日~2016年12月31日)を防災科学研究所高感度地震観測網(以下、Hi-net)からダウンロードした。ダウンロードした地震波形データはすべてHi-netのイベント波形データであり、関東・近畿・九州地方で起きた地震のうち震源の深さが150kmより浅いものを用いた。また、地震の大きさについては条件を設けないことにした。
(2) Hi-netでダウンロードしたデータをwinシステム(宇都宮大学伊東明彦氏作成)という地震波形解析ソフトで解析した。地震は複数の観測点で観測されており、1件の地震で数個の地震波形が存在する。私たちはwinシステムを用いて、震源地からより近い観測点で観測された地震波形がグラフの上になるように地震波形を並び替えた。このようにしてwinシステムを用いて地震波形の画像データを作成した(図)。これら作成した画像データを紙へ印刷し、それぞれの観測点における震源からの距離と初期微動継続時間を紙に印刷された地震波形から、定規と鉛筆を用いて求めた。各観測点におけるP波が到達したとみられる時点の地震波形上の1点とS波が到達したとみられる時点の地震波形上の1点を直線で結び、これら2点の間の長さを定規で測った。また、紙上における各観測点と震源からの距離の長さも定規で測った。地震波形の画像のグラフの縦軸は時間、横軸は震源からの距離となっており、これら測った長さを、紙上の1cmを実際の距離や時間の長さに当てはめることで、震源からの距離と初期微動継続時間を算出した。
(3) (2)で求めた震源からの距離と初期微動継続時間の値から先述した大森公式に用いて大森定数を算出した。
(4) 算出した大森定数の値について、関東・近畿・九州地方で起きた地震の地域ごとの平均を求め、比較し、考察した。また、大森定数の値に影響する原因を明らかにするために、その地震における震源の深さと大森定数の値との関連性を調べた。

4.結果・考察
(1) 地域ごとに大森定数の値の平均値を求めると、関東地方では8.95、近畿地方では8.63、九州地方では、8.27となった。また、各地方それぞれにおける大森定数の値をみると、地方ごとの差があるものの、値の範囲に幅があることから、地域ごとの固有の大森定数の値はあるとはいえない。
(2) 前年度から引き続き震源の深さと大森定数との関係に着目した。前年度は地震波形の読み取り件数が少なく、定数と地震の深さにはあまり関連性がないという結論だったが、今年度、地震波形データの読み取り件数を増やした結果、定数と地震の深さの関連性が存在するとはいえないことが明らかになった。

5.結論・今後の展望
 関東ローム層の存在する関東地方の定数の値の平均値が他の地方と比べて大きく、定数と震源の深さに関連性が見当たらなかったことから、定数が地方によって異なる原因は地盤にあるのではないかと考えられる。今後は地盤の地質と定数の値には関連性があるのかということについて、研究していきたい。