[O02-P77] 埼玉県飯能市における八王子構造線の位置の特定
キーワード:地質、高等学校、断層
目的
八王子構造線は関東平野と関東山地を東西に隔てる西側隆起の断層帯で、階段状の断層崖を形成している。大地形としては、図-1に示すように埼玉県北部から神奈川県に及ぶ直線的な地形を確認できる。しかし、中新世後期という古い時期に形成され、また大きな落差が生じていることから境界部分の風化が進んでいる。そのため、小地形としては明瞭ではない部分が多い。特に八王子構造線を構成する越生断層は活断層であるが、その南部にあたる越生―高麗本郷断層の延長上では断層の正確な位置がわかっていない。地震に対するリスク評価の観点から、局所的な断層位置を正確に決定することは重要である。そこで本研究では、越生断層の推定断層部分にあたる埼玉県飯能市内にて実地調査を行い、断層の詳細な位置を決定した。
調査方法
本研究では、文献および当該地域の地形的特徴より断層位置を推定し、その周辺の実地調査を行った。
(1) 断層の推定
文献では図-2に示すように越生―高麗本郷断層南端から飯能河原にかけて推定断層[2]、矢颪付近(A地点)に破砕帯が報告されている[3]。この周辺の地形図から等高線の形や間隔を読み取り、また2つの河川が流路を垂直方向へ変えるという特徴から、断層の位置を新たに推測した。
(2)実地調査
推測した断層付近からB,C,Dの3か所を選定し、実地調査を行った。各調査地点にて露頭を確認し、破砕帯や鏡肌の有無の他、断層を隔てた両側では地質が異なるという構造線の特徴を利用し、各調査地点がそれぞれ断層のどちら側にあるのかを調べ、断層の位置を特定した。
結果と考察
(1) 断層位置の推定
飯能河原以北
推定断層の位置に谷と急な勾配が確認できることから、断層の位置は図-3の実線の位置になると考えられる。
飯能河原以南
高麗川、入間川と推定断層の交点でそれらの河川は流路を垂直方向へと変えることから、飯能市の南部にある成木川との交点も垂直方向に曲がると推測し、断層の位置は図-3の実線の位置になると考えられる。
(2) 実地調査
B地点…西側では珪岩の露頭、東側では礫岩が確認できたことから断層は各調査地点の間である図-4の点線部を通っていることが分かった。
C地点…岩石の種類の特定はできなかったが、東西で種類が異なることは確認できたため、断層は各調査地点の間である図-4の実線部を通っていることが分かった。
D地点…珪岩の露頭は確認できたが、破砕帯や鏡肌は確認できなかったため、推定断層として破線で図-4に示す。
実地調査の結果から、北からA地点までの断層の位置は図-4の点線と実線上にあることがわかった。これは文献[2]で報告されている推定断層の位置ともよく整合した。断層の位置を決定したことで、地震災害に対するリスク評価への応用が期待される。今後はD地点付近の断層の位置を特定するために破砕帯や鏡肌の調査を行う予定である。
参考文献
[1] Google mapより引用、加筆
[2] 国土交通省 5万分の1都道府県土地分類基本調査
[3] 堀口萬吉 日曜の地学1 埼玉の地質をめぐって (築地書館,1975年)
[4] 時系列地形図閲覧サイト 今昔マップon the webより引用、加筆
[5] 地理院地図より引用、加筆
八王子構造線は関東平野と関東山地を東西に隔てる西側隆起の断層帯で、階段状の断層崖を形成している。大地形としては、図-1に示すように埼玉県北部から神奈川県に及ぶ直線的な地形を確認できる。しかし、中新世後期という古い時期に形成され、また大きな落差が生じていることから境界部分の風化が進んでいる。そのため、小地形としては明瞭ではない部分が多い。特に八王子構造線を構成する越生断層は活断層であるが、その南部にあたる越生―高麗本郷断層の延長上では断層の正確な位置がわかっていない。地震に対するリスク評価の観点から、局所的な断層位置を正確に決定することは重要である。そこで本研究では、越生断層の推定断層部分にあたる埼玉県飯能市内にて実地調査を行い、断層の詳細な位置を決定した。
調査方法
本研究では、文献および当該地域の地形的特徴より断層位置を推定し、その周辺の実地調査を行った。
(1) 断層の推定
文献では図-2に示すように越生―高麗本郷断層南端から飯能河原にかけて推定断層[2]、矢颪付近(A地点)に破砕帯が報告されている[3]。この周辺の地形図から等高線の形や間隔を読み取り、また2つの河川が流路を垂直方向へ変えるという特徴から、断層の位置を新たに推測した。
(2)実地調査
推測した断層付近からB,C,Dの3か所を選定し、実地調査を行った。各調査地点にて露頭を確認し、破砕帯や鏡肌の有無の他、断層を隔てた両側では地質が異なるという構造線の特徴を利用し、各調査地点がそれぞれ断層のどちら側にあるのかを調べ、断層の位置を特定した。
結果と考察
(1) 断層位置の推定
飯能河原以北
推定断層の位置に谷と急な勾配が確認できることから、断層の位置は図-3の実線の位置になると考えられる。
飯能河原以南
高麗川、入間川と推定断層の交点でそれらの河川は流路を垂直方向へと変えることから、飯能市の南部にある成木川との交点も垂直方向に曲がると推測し、断層の位置は図-3の実線の位置になると考えられる。
(2) 実地調査
B地点…西側では珪岩の露頭、東側では礫岩が確認できたことから断層は各調査地点の間である図-4の点線部を通っていることが分かった。
C地点…岩石の種類の特定はできなかったが、東西で種類が異なることは確認できたため、断層は各調査地点の間である図-4の実線部を通っていることが分かった。
D地点…珪岩の露頭は確認できたが、破砕帯や鏡肌は確認できなかったため、推定断層として破線で図-4に示す。
実地調査の結果から、北からA地点までの断層の位置は図-4の点線と実線上にあることがわかった。これは文献[2]で報告されている推定断層の位置ともよく整合した。断層の位置を決定したことで、地震災害に対するリスク評価への応用が期待される。今後はD地点付近の断層の位置を特定するために破砕帯や鏡肌の調査を行う予定である。
参考文献
[1] Google mapより引用、加筆
[2] 国土交通省 5万分の1都道府県土地分類基本調査
[3] 堀口萬吉 日曜の地学1 埼玉の地質をめぐって (築地書館,1975年)
[4] 時系列地形図閲覧サイト 今昔マップon the webより引用、加筆
[5] 地理院地図より引用、加筆