日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

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[O-04] 研究者のためのメンタルケアとコミュニケーション術

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 304 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:宋 苑瑞(法政大学経済学部)、吉川 知里(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、鈴木 由希(早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 地球科学専修)、座長:吉川 千里(海洋研究開発機構)、鈴木 由希

15:35 〜 16:05

[O04-01] 研究者のメンタルケア

★招待講演

*新井 励1 (1.筑波大学附属病院)

キーワード:メンタルケア、ストレス、マインドフルネス

研究者は日々難しい課題の解決のために努力し続けている。研究者が優れた研究を行うためには、好奇心、困難な問題に挑戦する意欲、集中力、諦めずに継続する力などが必要である。研究者には挫折や競争などの精神的負荷も強く、精神的な困難さを経験することも少なくない。精神的な負荷にさらされる中、うつなどの精神的な不調に陥った際には、もちろん治療が重要だが、そのような状況に陥らないための予防も非常に重要である。

ストレスについて考えたとき、自分にとってストレスとなっていることが意識されない場合も少なくない。近年、仏教の瞑想から着想を得て、宗教色を排した瞑想のプログラム、すなわちマインドフルネスが我が国でも医療、心理やビジネスの領域で活用されるようになりつつある。マインドフルネスとは、「今ここ」の体験に気づき(awareness)、それをありのままに受け入れる態度および方法(大谷,2014)である。端的に言えば注意のトレーニングになるが、注意や意識の向け方で、感覚や感情がどのように変化するか評価や判断をしないで観察することを通して、マインドフルネスの態度を身に着けていくことで、様々な刺激に反応してストレスを蓄積させてしまうことからも解放され、感情や感覚の波に乗ることができる(心身の落ち着きを保てる)ようになることを目指すものである。本シンポジウムでは、マインドフルネスの体験の機会を設け、自分の快不快の感覚に気づきを得る手がかりを紹介する。

加えて、ストレスや人間のもつストレスに対処する力(コーピング)について理解を深め、さらにコーピングチャンネル「Basic-Ph」について紹介をする。Basic-Phの開発者であるイスラエルのムーリー・ラハド博士は、人間のストレスに対処する力について調査し、Belief(信念)Affect(感情)Social(社会)Imagination(想像力)Cognitive(認知)Physical(身体)の6つのチャンネルを見出した。人間はこの6つのチャンネルを上手く活用しながらストレスに対処していくが、自分にとって有効なチャンネルについて気付くことで、チャンネルを活性化することができ、ストレスへの対処が容易になる。また、他者との感じ方やとらえ方の違いに困惑した際には相手のチャンネルに合わせることで、困難を乗り越えやすくなる。