[O06-P16] 糸魚川ジオパークの10年を振り返る
キーワード:糸魚川市、糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、ジオパーク、持続可能な開発目標
糸魚川は,2008年12月に日本ジオパークに認定,さらに2009年8月に世界ジオパークに認定され,現在,糸魚川ユネスコ世界ジオパーク(以下,糸魚川ジオパーク)として活動している.2018年は,糸魚川が日本ジオパークに認定されて,10年目となる節目の年となる.10年間のジオパーク活動を通じて,他の日本や世界のジオパークからの刺激,専門機関や団体からのさまざまな支援,持続可能な開発をめざした試行錯誤の取り組みなど,今までになかった経験を積むことができた.
糸魚川市は,糸魚川-静岡構造線や世界最古のヒスイ文化,親不知の地形など世界的に価値のある地形・地質遺産とそれに伴う歴史や文化がある.1987年に「フォッサマグナと地域開発構想」を策定し,それに沿った地形・地質を中心とする地域資源を使ったまちづくりが推進されてきた.このような,現在のジオパークのような地域づくりの経験が,2007年に世界ジオパークをめざした活動を始める動機となった.また,2005年に旧3市町村(能生町・青海町・糸魚川市)が合併した後に開始されたジオパーク活動は,市町村合併後の糸魚川市民の意識を一つにする役割を果たした.
ジオパークを使った地域づくりの先進地として小滝地区があげられる.小滝地区は,高浪の池や小滝川ヒスイ峡など重要な地形・地質遺産がありながら,特に高齢化が進行している地域である.ジオパーク活動として地区主催の講演会や小滝まるごとジオツアーが開催され,新潟大学学生の支援が行われている.また,台湾のジオパークからの地域住民が訪問するなど今までになかった交流が生まれ,地域住民の地域をよくしようという考えが前向きに変化してきた.山菜料理の開発や小滝まるごとミュージアムを設置するなど,地域資源の価値を高め,地元の食材を提供し,観光客に魅力をアピールする取組みを進めている.このような,地域づくりに対する住民意識の変化は,他の集落にも波及している.
持続可能な開発の視点を持った子どもたち,すなわち将来の糸魚川や日本の社会を担う人材育成にも力を入れてきた.2010年には「0才から18才までの子ども一貫教育方針」を作成し,系統的なジオパーク学習を学校や園,地域,家庭が一体となって取り組んでいる.小学校・中学校のカリキュラムにジオパーク学習が組み込まれ,その成果は毎年開催されるジオパーク学習交流発表会で披露されている.成人向けの生涯学習活動として,2009年から継続して糸魚川ジオパーク検定を行い,新潟会場や東京会場でも検定試験を実施するなど地元住民だけでなく,幅広い人々へのジオパークや糸魚川への関心を高めることに成功している.2012年から東京大学庭師倶楽部が地域密着型のジオパークカレッジを開校し,市民の受講生が卒業論文の作成に取り組み,その成果が地域づくりに活かされている.
ジオツーリズムの創出や活性化をめざして,次のような取り組みが行われてきた.2015年に北陸新幹線開業に合わせてフォッサマグナミュージアムのリニューアルと糸魚川ジオステーション・ジオパルの整備が実施された.また,ツアー商品として,地元バス会社と旅行会社,ジオパークガイドなどが関わる着地観光型のバスツアーや日本最深の縦型洞窟のあるマイコミ平を探索するツアーが開発され,実施されている.試験に合格したガイドは,「糸魚川ジオパーク観光ガイドの会」に属し,ガイド業務の受付,ガイド主催ツアー,自主研修,他ジオパークとの交流を行い,地域づくりの中心メンバーとして活躍し始めている.糸魚川がユネスコ世界ジオパークとなったことで,糸魚川を訪問する外国人も近年増加傾向にある.外国人観光客向けのシーフードシャトルバスの運行も2016年から続けられている.
飲食や宿泊業者などを対象としたジオパークマスター講座(2010年開始)は,店舗によるジオパーク情報の提供とジオパーク来訪者を「ジオパークマスターのいるお店」へ誘導して,ジオパークとビジネスを結びつける取り組みであり,ジオパークに関係した創作メニューづくりや新たな商品開発を促す効果が出ている.「糸魚川うまいもん会」では,糸魚川の食材を利用した糸魚川ブラック焼きそば(2010年)やジオサイトをイメージしたジオ丼(2013年),地魚のメギスのメニュー開発(2017年)などを行っている.新潟県立海洋高校では,キャリア教育の一環として,地元の水産物を加工・販売することで地域経済に貢献している.
2016年12月に発生し,強風によって延焼拡大した糸魚川市駅北大火では,火災に対して初めて被災者生活再建支援法が適用された.強風などの気象条件が糸魚川の地形・地質と関係して生み出される自然現象であることが新潟県や国に理解されたことによる.これは糸魚川がすすめてきたジオパーク活動の成果ともいえる.活火山の焼山がある早川地区では,防災教育をジオパーク学習に取入れ,気象庁や市,地域住民が一体となった取組みを進めている.
国連では,2030年に向けて,持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)を策定した.糸魚川ジオパークでは,今後とも地域の持続的な発展のために,ジオパークのネットワークを生かし,市民のボトムアップ運営を軸にしたジオパーク活動を実施していきたい.
糸魚川市は,糸魚川-静岡構造線や世界最古のヒスイ文化,親不知の地形など世界的に価値のある地形・地質遺産とそれに伴う歴史や文化がある.1987年に「フォッサマグナと地域開発構想」を策定し,それに沿った地形・地質を中心とする地域資源を使ったまちづくりが推進されてきた.このような,現在のジオパークのような地域づくりの経験が,2007年に世界ジオパークをめざした活動を始める動機となった.また,2005年に旧3市町村(能生町・青海町・糸魚川市)が合併した後に開始されたジオパーク活動は,市町村合併後の糸魚川市民の意識を一つにする役割を果たした.
ジオパークを使った地域づくりの先進地として小滝地区があげられる.小滝地区は,高浪の池や小滝川ヒスイ峡など重要な地形・地質遺産がありながら,特に高齢化が進行している地域である.ジオパーク活動として地区主催の講演会や小滝まるごとジオツアーが開催され,新潟大学学生の支援が行われている.また,台湾のジオパークからの地域住民が訪問するなど今までになかった交流が生まれ,地域住民の地域をよくしようという考えが前向きに変化してきた.山菜料理の開発や小滝まるごとミュージアムを設置するなど,地域資源の価値を高め,地元の食材を提供し,観光客に魅力をアピールする取組みを進めている.このような,地域づくりに対する住民意識の変化は,他の集落にも波及している.
持続可能な開発の視点を持った子どもたち,すなわち将来の糸魚川や日本の社会を担う人材育成にも力を入れてきた.2010年には「0才から18才までの子ども一貫教育方針」を作成し,系統的なジオパーク学習を学校や園,地域,家庭が一体となって取り組んでいる.小学校・中学校のカリキュラムにジオパーク学習が組み込まれ,その成果は毎年開催されるジオパーク学習交流発表会で披露されている.成人向けの生涯学習活動として,2009年から継続して糸魚川ジオパーク検定を行い,新潟会場や東京会場でも検定試験を実施するなど地元住民だけでなく,幅広い人々へのジオパークや糸魚川への関心を高めることに成功している.2012年から東京大学庭師倶楽部が地域密着型のジオパークカレッジを開校し,市民の受講生が卒業論文の作成に取り組み,その成果が地域づくりに活かされている.
ジオツーリズムの創出や活性化をめざして,次のような取り組みが行われてきた.2015年に北陸新幹線開業に合わせてフォッサマグナミュージアムのリニューアルと糸魚川ジオステーション・ジオパルの整備が実施された.また,ツアー商品として,地元バス会社と旅行会社,ジオパークガイドなどが関わる着地観光型のバスツアーや日本最深の縦型洞窟のあるマイコミ平を探索するツアーが開発され,実施されている.試験に合格したガイドは,「糸魚川ジオパーク観光ガイドの会」に属し,ガイド業務の受付,ガイド主催ツアー,自主研修,他ジオパークとの交流を行い,地域づくりの中心メンバーとして活躍し始めている.糸魚川がユネスコ世界ジオパークとなったことで,糸魚川を訪問する外国人も近年増加傾向にある.外国人観光客向けのシーフードシャトルバスの運行も2016年から続けられている.
飲食や宿泊業者などを対象としたジオパークマスター講座(2010年開始)は,店舗によるジオパーク情報の提供とジオパーク来訪者を「ジオパークマスターのいるお店」へ誘導して,ジオパークとビジネスを結びつける取り組みであり,ジオパークに関係した創作メニューづくりや新たな商品開発を促す効果が出ている.「糸魚川うまいもん会」では,糸魚川の食材を利用した糸魚川ブラック焼きそば(2010年)やジオサイトをイメージしたジオ丼(2013年),地魚のメギスのメニュー開発(2017年)などを行っている.新潟県立海洋高校では,キャリア教育の一環として,地元の水産物を加工・販売することで地域経済に貢献している.
2016年12月に発生し,強風によって延焼拡大した糸魚川市駅北大火では,火災に対して初めて被災者生活再建支援法が適用された.強風などの気象条件が糸魚川の地形・地質と関係して生み出される自然現象であることが新潟県や国に理解されたことによる.これは糸魚川がすすめてきたジオパーク活動の成果ともいえる.活火山の焼山がある早川地区では,防災教育をジオパーク学習に取入れ,気象庁や市,地域住民が一体となった取組みを進めている.
国連では,2030年に向けて,持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)を策定した.糸魚川ジオパークでは,今後とも地域の持続的な発展のために,ジオパークのネットワークを生かし,市民のボトムアップ運営を軸にしたジオパーク活動を実施していきたい.