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[O-06] ジオパークがつなぐ地球科学と社会 ー10年の成果と課題ー

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、市橋 弥生(佐渡市教育委員会)、小原 北士(Mine秋吉台ジオパーク推進協議会、共同)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)

[O06-P20] ジオパーク映画の上映によってもたらされたジオストーリーの普及効果

*久保 貴志1竹内 章2 (1.黒部市吉田科学館、2.立山黒部ジオパーク)

キーワード:ジオパーク

ジオパークにとって最も重要な取り組みは、ジオストーリーを社会に普及させることだ。なぜなら、ジオストーリーの理解なくしては、ジオサイトを理解することはできないし、理解できないジオサイトを保護することもできない。当然ジオサイトが破壊されてしまってからではジオツアーも成立しえない。これまで、さまざまな出版物や講演などでジオストーリーを紹介する試みが行われ、一定の普及効果があることが実証されている。しかし、出版物や講演は、もとよりジオパークに興味のある人々にジオストーリーを普及させることはできるが、ジオパークに関心の薄い層に対しては普及できないという欠点があった。我々はこの問題を解決するため、エンターテインメントとしてジオストーリーを普及させる手法を開発した。

(目的と手法)

立山黒部ジオパークは立山黒部ジオパークのジオストーリーを普及させるとともに、ジオツアーへの参加意欲を喚起することを目的として映画(映画タイトル「剣(けん)の山」)を作成した。この映画は、科学に関心が薄い層でも体系的にジオストーリーが理解できるよう、科学的に解説する場面を設けながらも、従来ジオパークに関心の薄かった層を集客するため、エンターテインメントを持たせ、青春映画として制作した。

また、視聴者にジオツアーを疑似体験させるため、特殊な機材で撮影を行い、ドーム型スクリーンで上映を行っている。



(結果)

視聴者にアンケートを取った結果、以下のような結果が得られた

アンケート結果

・客層の変化

上映前の年齢層

小学生40% 30代15% 40代20% その他・無回答15%

上映後の年齢層

60代24% 70代以上23% 40代17% 50代11% 小学生9%

・映画の評価

「とてもよい」・「よい」…92%「普通」・無回答…8%「わるい」…0%

ジオパークの知名度

「知っている」…42%「聞いたことはある」…32%「知らなかった」…25% 無回答…1%

・ジオパークを知りたい・ジオツアーに行きたいと思うか

「そう思う」…89%がそう思うと答え、「そう思わない」9% 無回答2%

また、少数であるものの、視聴者が映画のロケ地であるジオサイトを自主的に訪れるジオツアーが見られるようになった。



(考察)

アンケート結果から、ジオパークの映画は、上映施設(黒部市吉田科学館)の客層を有意に変化させ、ジオパークに関心のある客層を集客することができることが明らかになった。また、ジオパークに関心のなかった層に、関心を持たせ、現地に行ってみたいと思わせる効果があることが示唆された。



(結論)

ジオパーク映画はジオストーリーを浸透させ、ジオツアーへの関心を喚起することができ、質の高いジオツアーを行ううえで良い素地を作ることができる。

 

(今後の課題)

まだ映画の公開から3か月しか経過しておらず、視聴者は2000人程度である。今後、継続して上映し、ジオサイトを訪れる人々がどのように変化するか観察する必要がある。また、この映画だけではジオパークのジオストーリーを全て盛り込むことは不可能であり、今後、複数の映画を制作することによってジオストーリーを浸透させる必要がある。