日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] 口頭発表

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[O-07] 地球科学とアート -互いの創造を拡大する-

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:笹岡 美穂(高知大学/株式会社SASAMI-GEO-SCIENCE)、船引 彩子(東京理科大学基礎工学部)、久保 貴志(黒部市吉田科学館、共同)、白石 智子、座長:石井 陽子(大阪市立自然史博物館)、笹岡 美穂(高知大学/株式会社SASMAI-GEO-SCIENCE)

14:10 〜 14:25

[O07-02] 考古学・古環境学的研究データとアート: 古代は誰のものか

★招待講演

*安芸 早穂子1早川 裕弌1 (1.東京大学空間情報科学研究センター)

キーワード:景観復原、考古学、古環境、人新世、芸術

考古学や古環境学は,人新世(Anthropocene)における人類の文化的活動や,その基礎となる環境条件について,発掘調査や堆積物などの分析にもとづく客観的な証拠をもとに構築してゆく学問である。ここで,とくに考古学の場合,依拠すべき物的証拠(遺物・遺構)は数量的に限られたものとなるため,統計的に充分な証拠が得られることは必ずしも多くない。したがって,過去における文化的・自然的景観の客観的な復原は困難をともなうため,客観性のみならず,主観的解釈が少なからず重要な役割をもつこととなる。

ところが,その科学的な思考や実証に関わる方法は,とくに一般の人々と主観的解釈を共有するには,多くのプロセスを必要とし,専門的研究分野の内側だけでは,より多様な主観的表現を展開する活動に注ぐ熱量的・時間的・技術的猶予を持ち得ていないのが現状である。一方,コンテンポラリーなアートの表現手法は,古典的分野から,時代に感応しながら目覚ましく拡大するメディアアートまで,ますます裾野を拡大しつつ,より先鋭的,専門的な視野への関心を深めている。

アート的な感性と表現とを通して,考古学・古環境学的研究データを再構築し,多くの人が知覚・感受できる復原景観を表現・創作することは,両者にとって意味深い発見と展開への可能性をはらんでいる。古代における景観や営みの風景を,現代人にリアリティをもって伝えるためには,科学的な手順のみでは充分でない。そこで,科学的研究成果を,より多様な形で共有する手段として,,アートの感性と表現は有効であると考えられる。ここでは,縄文時代を主対象とした試みをいくつか実例をもって紹介し,アートと地球科学の協働に関わる発展性について議論する。