日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-07] 地球科学とアート -互いの創造を拡大する-

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 201A (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:笹岡 美穂(高知大学/株式会社SASAMI-GEO-SCIENCE)、船引 彩子(東京理科大学基礎工学部)、久保 貴志(黒部市吉田科学館、共同)、白石 智子、座長:白石 智子久保 貴志

16:15 〜 16:30

[O07-09] サイエンスとアートが手を取り合う広報活動:大阪市立自然史博物館「氷河時代」展ポスターの例

★招待講演

*石井 陽子1 (1.大阪市立自然史博物館)

キーワード:自然史博物館、広報活動、サイエンスとアート

強力な広報手段を持たない地方の公立博物館による自主企画の特別展では、ポスターイメージが広報の要となる。大阪市立自然史博物館2016年夏の特別展「氷河時代-化石でたどる日本の気候変動-」は、マスコミから大きく取り上げられることはなかったが、25,000人を超える入場者があり、当館の自主企画の特別展の中では成功したものとなった。来場者アンケートから、「氷河時代」展の成功には、ポスターイメージの魅力が要因の一つとなったことが伺われた。
「氷河時代」展ポスターの中央には、ナウマンゾウを配置した。日本列島の中・上部更新統からは、ナウマンゾウの化石が多数出土していることから、日本列島の氷河時代を象徴するのはナウマンゾウがふさわしいと考えたためである。また、ナウマンゾウが43万年前の氷期に日本列島に移入して以来、その後何度も訪れた氷期・間氷期の繰り返しを生き抜いたことを象徴的に表現するために、背景左側には氷期の山々と森林、右側には間氷期の山々と森林を配置した。総務課職員と学芸員からなる広報委員会の中で出されたこの原案をもとに、デザイナーにデザインを依頼した。ポスターイメージ作成の過程で、ナウマンゾウの復元が正確かどうか、氷期と間氷期での森林の木々の違いが表現されているかどうか、何度も検討して助言を行った。デザイナーも学芸員の助言に十分に応え、能力を発揮した。結果として、科学的に正確なだけでなく絵画としても魅力的なポスターイメージが完成し、来場者を増やすことにつながったと考える。市民に博物館に足を運んでもらうためには、また、サイエンスを市民に広く普及するためには、アートの力が必要であるということを改めて実感させられた事例として、紹介したい。