日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-AE 天文学・太陽系外天体

[P-AE20] 系外惑星

2018年5月24日(木) 10:45 〜 12:15 304 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:生駒 大洋(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、成田 憲保(東京大学)、座長:生駒 大洋(東京大学)、成田 憲保(東京大学)

11:00 〜 11:15

[PAE20-08] すばる望遠鏡用赤外線視線速度精密測定装置IRD: 晩期M型矮星周りの地球型惑星の探索

★招待講演

*大宮 正士1,2小谷 隆行1,2佐藤 文衛3田村 元秀1,4 (1.アストロバイオロジーセンター、2.国立天文台、3.東京工業大学、4.東京大学)

キーワード:地球質量惑星、視線速度精密測定、低質量星、晩期M型矮星、ハビタブルゾーン、ドップラー法

我々は、低質量星周りのハビタブルゾーンに地球型惑星を発見し、低質量星周りの惑星系の構造を統計的に明らかにすることを目的に晩期M型矮星の視線速度精密サーベイを行うことを目指している。そのサーベイの観測ターゲットは晩期M型の矮星だが、このような星は、近赤外にフラックスのピークがあり、多数の吸収線が近赤外スペクトルに存在することから、近赤外線分光器で視線速度を精密に測定するのに向いており、さらに、低質量の恒星であるため地球型惑星のような低質量惑星による視線速度変化が比較的大きいためにドップラー法での地球型惑星の検出に向いている。そのような晩期M型矮星のサーベイのために、我々は、すばる望遠鏡用赤外線視線速度精密測定装置IRDを製作している。この装置は、0.97-1.75umをカバーするファイバーフィードの近赤外高分散エシェル分光器であり、波長校正光源としてレーザー周波数コムを用いる。分光器温度のコントロールやレーザー周波数コムの精密な輝線スペクトルを用いることによって視線速度測定は1m/sの安定性を期待できる。


現在、IRD装置のすばる望遠鏡へのインストールは終了し、昨年の8月にすばる望遠鏡を使った分光器のファーストライトを実施した。今年2月からはコムを波長校正光源として使用したフルシステムによるオンスカイでのエンジニアリング観測を開始することができた。これらの観測と実験室での視線速度安定性の調査からその視線速度安定性は少なくとも2週間で2m/s以下の変化に収まっていることを確認している。今後はすばる望遠鏡戦略枠の中で大規模RVサーベイを2019年より実施する予定である。低質量星周りの惑星形成の種族合成の結果とIRDサーベイの戦略に基づいたサーベイシミュレーションによると5年間の長期サーベイの中で20個以上のスーパーアースや地球質量の惑星が検出されることを期待できる。本講演では、IRDプロジェクトと装置の現状、IRD/Subaru planet search programの戦略と期待される結果について紹介する。