[PAE20-P06] TRAPPIST-1惑星系の惑星質量推定のためのトランジット観測とライトカーブ解析
キーワード:TRAPPIST-1、地球型惑星、トランジット惑星、TTV、質量推定、MuSCAT
近年、太陽系近傍にあるM 型星周りの地球型惑星が注目されている。中でも、トランジット法で発見されたTRAPPIST-1系は、約12pcと比較的太陽系に近い距離にあり、中心星であるM 型星の非常に近く(< 0.1au)を7 つの地球サイズの惑星が公転している惑星系として今後の詳細な観測が重要な天体である。さらに、7つのうち3つの惑星、TRAPPIST-1e、f、gは、惑星表面に液体の水が存在できるハビタブルゾーン内にあると考えられている。これらの惑星のハビタビリティについてさらに議論を進めるにあたって、岩石や鉄など、惑星の組成を推定するためにも、惑星の半径と質量のデータは不可欠である。通常、半径はトランジット法、質量は視線速度法を用いて求められることが多い。しかしTRAPPIST-1系は、主星が可視光で非常に暗いこと、各惑星が非常に小さく軽いこと、7つも惑星が存在することなどの理由により、視線速度法による質量推定は複雑となる。そこで、TTV(Transit Timing Variation)法という手法が用いられてきた。TTVとは、惑星のトランジット周期が、周りの惑星からの重力摂動により変動する現象である。複数回に渡ってトランジット観測を行い、TTVのデータを理論モデルと比較することで、重力摂動を引き起こしている惑星の質量に制限を加えることができる。特に、トランジット惑星と軌道共鳴の関係にある惑星が存在している場合、TTV の振幅は大きくなる。TRAPPIST-1系ではそれぞれの惑星が軌道共鳴の関係にあるため、この方法により惑星の質量を比較的精度良く決定できる。
先行研究[1][2]ではTRAPPISTサーベイやSpitzer、K2ミッションのデータ等を用いてTTV解析が行われ質量が推定されていたが、データの数が少なく、依然として不確かさが大きかった。そこで本研究では、TTVの新たなデータを得るため、トランジット中心の正確な時刻を求めることを目標に、TRAPPIST-1惑星dとeのトランジット観測とライトカーブ解析を行った。
観測には岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に取り付けられた撮像装置MuSCATを用い、2017年11月5日に起こったTRAPPIST-1dとeの連続したトランジットをzバンドで観測した。得られたライトカーブは、pythonを用いたモデルフィッティングにより解析した。モデルはトランジットモデルとシステマティクスモデルの重なったものであると考えた。トランジットモデルにはモジュールPyTransitを用い、2つの連続したトランジットを描けるよう変更を加えた。本研究では主星に対する惑星の半径とトランジット中心時刻をフリーパラメタとし、残りのパラメタ(軌道長半径、インパクトパラメタ、公転周期、周縁減光パラメタ)は文献値を用いた。システマティクスについては、望遠鏡の指向方向のずれやairmass等の線型結合を仮定した。様々なパラメタセットでフィッティングをおこなったのち、ベイズ情報量規準(BIC)を基準に10組のパラメタの組み合わせを選んだ後、マルコフチェーンモンテカルロ法(MCMC) を用いてより詳細なモデルフィッティングを実行した。モジュールはemcee.EnsembleSamplerを用い、最小二乗法でフィッティングし、100点、2000ステップの、自己相関を考慮した十分長いチェーンの結果から、トランジット中心の値と標準偏差を求めた。
結果として、TRAPPIST-1dとeについて、先行研究のTTVのグラフ(Wang et al.(2017)[2] FIG.3)に1点ずつ加え、TTVモデルを制限するのに有用なトランジット中心の時刻データを得ることができた。この結果から、惑星dとeのそれぞれと軌道共鳴の関係にある惑星として、惑星c、d、e、fの質量に制限を加えることができる。
[1] Gillon et al., 2017, Nature, Vol 542
[2] Wang et al., 2017, ArXiv e-prints, 1704.04290
先行研究[1][2]ではTRAPPISTサーベイやSpitzer、K2ミッションのデータ等を用いてTTV解析が行われ質量が推定されていたが、データの数が少なく、依然として不確かさが大きかった。そこで本研究では、TTVの新たなデータを得るため、トランジット中心の正確な時刻を求めることを目標に、TRAPPIST-1惑星dとeのトランジット観測とライトカーブ解析を行った。
観測には岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に取り付けられた撮像装置MuSCATを用い、2017年11月5日に起こったTRAPPIST-1dとeの連続したトランジットをzバンドで観測した。得られたライトカーブは、pythonを用いたモデルフィッティングにより解析した。モデルはトランジットモデルとシステマティクスモデルの重なったものであると考えた。トランジットモデルにはモジュールPyTransitを用い、2つの連続したトランジットを描けるよう変更を加えた。本研究では主星に対する惑星の半径とトランジット中心時刻をフリーパラメタとし、残りのパラメタ(軌道長半径、インパクトパラメタ、公転周期、周縁減光パラメタ)は文献値を用いた。システマティクスについては、望遠鏡の指向方向のずれやairmass等の線型結合を仮定した。様々なパラメタセットでフィッティングをおこなったのち、ベイズ情報量規準(BIC)を基準に10組のパラメタの組み合わせを選んだ後、マルコフチェーンモンテカルロ法(MCMC) を用いてより詳細なモデルフィッティングを実行した。モジュールはemcee.EnsembleSamplerを用い、最小二乗法でフィッティングし、100点、2000ステップの、自己相関を考慮した十分長いチェーンの結果から、トランジット中心の値と標準偏差を求めた。
結果として、TRAPPIST-1dとeについて、先行研究のTTVのグラフ(Wang et al.(2017)[2] FIG.3)に1点ずつ加え、TTVモデルを制限するのに有用なトランジット中心の時刻データを得ることができた。この結果から、惑星dとeのそれぞれと軌道共鳴の関係にある惑星として、惑星c、d、e、fの質量に制限を加えることができる。
[1] Gillon et al., 2017, Nature, Vol 542
[2] Wang et al., 2017, ArXiv e-prints, 1704.04290