日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG21] 宇宙・惑星探査の将来計画と関連する機器開発の展望

2018年5月21日(月) 09:00 〜 10:30 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:亀田 真吾(立教大学理学部)、笠原 慧(東京大学)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系、共同)、吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、座長:笠原 慧

09:30 〜 09:45

[PCG21-03] アナログデジタル混載ASICを用いた新型ワンチップスペクトル受信器の開発

*頭師 孝拓1小嶋 浩嗣1笠原 禎也2濱野 拓也2高橋 翼2尾崎 光紀2八木谷 聡2徳永 祐也2鎌田 俊介1山川 宏1 (1.京都大学、2.金沢大学)

キーワード:観測器、プラズマ波動

プラズマ波動は宇宙電磁環境の解明に重要な観測対象であり、これまで様々な科学衛星に搭載されたプラズマ波動観測器による観測が行われてきた。プラズマ波動観測器は、ダイポールアンテナやループアンテナのような電磁界センサーと、その信号を処理する受信器からなる。特に受信器には高性能な電子回路が必要となるため、これまでの観測器は質量や体積が大きくなってしまっていた。しかし近年、超小型衛星の利用の拡大や、衛星搭載観測器の増加による機器1つ当たりのリソースの減少などから、観測器の小型化が強く求められている。我々は、受信器の小型化のため、特定用途向け集積回路(ASIC)を利用した回路の開発を行ってきた。ASICによって受信器に必要な回路を集積回路化することで、回路を大幅に小型化することが可能である。
このような回路の大幅な小型化を利用した新しい構成の受信器として、アナログ回路とデジタル信号処理を組み合わせることによる新型スペクトル受信器を提案している。新型受信器では、従来の高速フーリエ変換(FFT)ベースのスペクトル型受信器にみられた、“広帯域の信号に対して受信器のダイナミックレンジと観測対象のダイナミックレンジを合わせることが難しい“という欠点を克服したうえで、従来と同等の時間周波数分解能が得られる。この新型受信器は、帯域制限、増幅、アンチエイリアシングを行うアナログ部と、A/Dコンバーター、FFT処理及び受信器の制御を行うデジタル部から構成されている。アナログ部は、各フィルタ及びメインアンプの特性を外部信号で切り替え可能にすることで、観測帯域をバンド1:DC-1 kHz, バンド2:1 kHz-10 kHz, バンド3:10 kHz-100 kHzの3つから選択できる仕組みとなっている。デジタル部での制御により観測帯域を順にスイープし、得られた波形を順次FFT処理することで最終的に各時刻での周波数スペクトルを得ることができる。
我々はこの新型受信器の回路をすべてASICで実現することで、最終的にワンチップの受信器として実現することを目標としている。これまでに、アナログ部およびA/DコンバーターをASICで実現することに成功している。また、アナログ部とA/Dコンバーターを一つのASICチップ、デジタル部をFPGAで実現したブレッドボードモデルの開発を行い、設計したデジタル部によって新型受信器の機能が実現可能であることを確認した。ブレッドボードモデルにおいて、時間分解能は112 msec, 周波数分解能は、バンド1:13Hz, バンド2:130Hz, バンド3:1300Hzであった。ブレッドボードモデルで機能の確認された設計のデジタル部について、ASICによるチップを作成し現在その性能を検証中である。
本発表においては、新型スペクトル受信器について、設計の詳細およびワンチップ化に向けた性能検証の結果について述べる。特にASICで実現したデジタル部の性能について詳細に述べる予定である。