16:20 〜 16:35
[PCG21-15] 固体物質全体が識別可能な小型磁気分離システムの開発
キーワード:反磁性体、磁気体積力、磁気分離、常磁性体、ネオジム磁石
自然界に存在する固体物質の大多数は反磁性体に属し、磁場中では物質ごとに異なる反磁性磁化を発生するが、その大きさは磁鉄鉱や金属鉄の磁化に比べ5~6桁も小さく、磁場による並進運動が検討されることはなかった。先行研究で私たちは、種類が異なる難揮発性粒子の集団を室温の微小重力空間に浮遊させた後、ネオジム永久磁石による磁場勾配によって磁場の外へ並進させた。その結果、粒子は物質固有の磁化率の差異によって、物質ごとの集団に分離することを初めて見出した[1][2]。さらにその並進速度から粒子ごとの磁化率が計測でき、その値から未同定の物質の種類を非破壊で識別できることを実証した。今回、これらの実験をT=200K付近の低温空間で行う装置を開発し、これを用いて代表的な揮発性固体である氷Ihおよびドライアスで、上記の2つの磁気的機能を実証した。外惑星領域に存在する固体の大多数は、氷、ドライアイス、エタン、窒素などの揮発性物質であり、今回の装置および測定結果は、その存在比を無人探査で計測する新たなシステムの基盤となりえる。
上記の分離・識別の原理を以下に示す。希薄な中性ガス媒体で満たされたμℊ空間に、の一方向に単調減少する磁場分布を、一方向に単調減少する磁場を設定し、そのの中の一点で、、質量mの単一の反磁性粒子を静かに開放する。すると粒子内には磁場と逆方向に反磁性磁化が発生し、これが磁場勾配による磁気力を生む結果、粒子は磁場ゼロの方向に並進する。この時、磁場ゼロの空間での終端速度vTは得る終端速度、エネルギー保存則により、初期位置の磁場強度と物質固有の磁化率のみに依存し、mに依存しない [3]。そこで、体の粒子粒子はで表されるをゼロ、磁場強度をB0とするからした常磁性粒子は20χ½ 、弱磁性粒子をのみ今、上と同じ設定で単一粒子の代わりに、物質の種類が異なる複数の粒子を同一位置から開放すると、それらの粒子は、粒子質量の大小に関係なく、(磁化率の差異によって)物質の種類ごとの集団に分かれて並進する。それらを回収することで、反磁性粒子集団の、磁気分離が実現する[1]。
太陽系内において固体物質の詳細なの物質分布を知るには、広い空間領域で無人探査を実施し、各観測点での物質の存在頻度のデータを効率よく分析し蓄積する必要があるつつ、結果を地球に。このような目的の搭載装置には、1)小型で力学的強度が強いこと、2)大電力を必要としないこと 3)動作原理が単純で、その科学的根拠が容易に検証できること、4)可能であれば試料を非破壊で分析できること、などの条件が求められる。今回開発した装置は、上記の条件をほぼ満たしており、将来的には、既存の質量分析計や赤外分光計装置などの既存の装置をを補完する役割を果しえるする可能性がある。
実験では、まず寒剤を充填した断熱二重ガラス容器内に、小型のネオジム永久磁石(40103010 20mm)を固定して磁場勾配を発生させ、これを落下用の木製ボックス内(4001040010300mm)に設置する。このボックスを180cmの高さから自由落下させ、約0.5秒間の短い微小重力空間を作る。自由落下中に粒子が引き起こす並進運動を高速度カメラで観測し、得られた終端速度から磁化率を求める[3]。上記の実験で得た結果に基づき、粒子の磁化率定値を文献値と比較し、粒子の物質同定が原理通り実現するか確認する。以上の結果に基づき、無人探査機に装置を搭載する場合の問題点(装置の小型・軽量化など)を検討する。また今後、100K以下の固化温度を有するエタン、メタンおよび窒素の粒子に関する実験を実現するための課題について考察する。
References: [1] K. Hisayoshi, C. Uyeda, K. (2016) Terada, Sci . Reps 6 38431. [2] You tube 「現存する全物質を永久磁石で磁気分離する」. [3] Uyeda, Hisayoshi, Kanou, (2010) J. Phys. Soc. Jpn. 79, 064709,
上記の分離・識別の原理を以下に示す。希薄な中性ガス媒体で満たされたμℊ空間に、の一方向に単調減少する磁場分布を、一方向に単調減少する磁場を設定し、そのの中の一点で、、質量mの単一の反磁性粒子を静かに開放する。すると粒子内には磁場と逆方向に反磁性磁化が発生し、これが磁場勾配による磁気力を生む結果、粒子は磁場ゼロの方向に並進する。この時、磁場ゼロの空間での終端速度vTは得る終端速度、エネルギー保存則により、初期位置の磁場強度と物質固有の磁化率のみに依存し、mに依存しない [3]。そこで、体の粒子粒子はで表されるをゼロ、磁場強度をB0とするからした常磁性粒子は20χ½ 、弱磁性粒子をのみ今、上と同じ設定で単一粒子の代わりに、物質の種類が異なる複数の粒子を同一位置から開放すると、それらの粒子は、粒子質量の大小に関係なく、(磁化率の差異によって)物質の種類ごとの集団に分かれて並進する。それらを回収することで、反磁性粒子集団の、磁気分離が実現する[1]。
太陽系内において固体物質の詳細なの物質分布を知るには、広い空間領域で無人探査を実施し、各観測点での物質の存在頻度のデータを効率よく分析し蓄積する必要があるつつ、結果を地球に。このような目的の搭載装置には、1)小型で力学的強度が強いこと、2)大電力を必要としないこと 3)動作原理が単純で、その科学的根拠が容易に検証できること、4)可能であれば試料を非破壊で分析できること、などの条件が求められる。今回開発した装置は、上記の条件をほぼ満たしており、将来的には、既存の質量分析計や赤外分光計装置などの既存の装置をを補完する役割を果しえるする可能性がある。
実験では、まず寒剤を充填した断熱二重ガラス容器内に、小型のネオジム永久磁石(40103010 20mm)を固定して磁場勾配を発生させ、これを落下用の木製ボックス内(4001040010300mm)に設置する。このボックスを180cmの高さから自由落下させ、約0.5秒間の短い微小重力空間を作る。自由落下中に粒子が引き起こす並進運動を高速度カメラで観測し、得られた終端速度から磁化率を求める[3]。上記の実験で得た結果に基づき、粒子の磁化率定値を文献値と比較し、粒子の物質同定が原理通り実現するか確認する。以上の結果に基づき、無人探査機に装置を搭載する場合の問題点(装置の小型・軽量化など)を検討する。また今後、100K以下の固化温度を有するエタン、メタンおよび窒素の粒子に関する実験を実現するための課題について考察する。
References: [1] K. Hisayoshi, C. Uyeda, K. (2016) Terada, Sci . Reps 6 38431. [2] You tube 「現存する全物質を永久磁石で磁気分離する」. [3] Uyeda, Hisayoshi, Kanou, (2010) J. Phys. Soc. Jpn. 79, 064709,