日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG22] アルマによる惑星科学の新展開

2018年5月23日(水) 09:00 〜 10:30 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:武藤 恭之(工学院大学 教育推進機構)、百瀬 宗武(茨城大学理学部)、佐川 英夫(京都産業大学理学部、共同)、下条 圭美(国立天文台チリ観測所)、座長:武藤 恭之

09:45 〜 10:15

[PCG22-04] サイクル4における太陽ナノフレアのALMA-ひので-IRIS共同観測

★招待講演

*清水 敏文1阿部 仁2下条 圭美3 (1.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、2.東京大学、3.国立天文台)

キーワード:太陽、ナノフレア、コロナ加熱

ALMAによる太陽観測の共同利用が、サイクル4観測期間(2016年10月~2017年9月)より開始された。太陽をターゲットした提案が世界各国から多数出され、そのうち15提案プロジェクトが採択された。本講演の筆者らが提案したプロジェクト「太陽マイクロフレア・ナノフレアのエネルギー評価」(2016.1.00030.S, Energy evaluation of micro- and nano-flaring heating events in solar active regions)は、そのうちの一つである。ナノフレア規模の磁気リコネクションは太陽活動領域コロナの加熱源の有力候補である。ナノフレア発生の数頻度分布は、コロナ加熱の評価において重要である。ALMA観測は10^22-10^24エルグのエネルギー規模のリコネクションによるエネルギー解放を探る新しい手段を提供する。リコネクションによる解放エネルギーは彩層上部を突発的に暖め、それはALMAによって輝度温度の増加として観測されるはずである。ALMAの高時間分解能データを、「ひので」と「IRIS」データと比較して調べることで、リコネクションによる解放エネルギーの定量的評価ができるだろう。
この観測は2017年3月19日に実施された。この観測では、コンパクトな基線長(15-155m)のC40-1配置であり、ビーム幅は3.7秒角とALMAがもつ高解像度ではないが、太陽観測衛星「ひので」や「IRIS」と連携した観測であった。太陽活動が低下しており、太陽面上にかろうじて現れた小さな短命な活動領域に対して、バンド3 (100GHz)の電波画像を約3時間にわたり取得した。「ひので」は太陽表面磁場の高精度マップなど、IRISはALMAと類似した彩層上部をとらえたマップを同時に得ることに成功した。当初、3つの異なる装置で取得されたマップを高精度に空間アライメントをして、同じ領域を観測していることを確認することに苦慮したが、アライメントに必要な座標の誤りを訂正する等の努力によって、3つの異なるマップの空間アライメントがの信頼性を確認した。観測した領域は非常に静かでマイクロフレアは観測されなかったが、30K程度の温度増加が多数存在することが明らかとなった。この温度増加は、ノイズレベル10K以下に比べて、有意な変化である。最大の温度増加イベントは、磁場の正負極が接する磁気中性線あたりで発生している。また他の増加イベントは表面に分布する磁気島構造の中というよりもその周辺で頻発している。温度増加イベントの空間サイズはビームサイズ程度と比較的小さい。この温度増加を熱エネルギーの注入によるとすると、10^22エルグ程度の熱注入に相当する。一方、多数観測された温度増加の中には、周期的な増減を示すイベントも観測されている。これは圧縮変動を伴う波動をとらえた可能性もある。本講演では、ALMAと衛星の連携観測で得られたデータを提示して、太陽ナノフレアのエネルギー評価や波動の評価についての解析結果を議論することで、太陽観測におけるALMA観測の重要性を論じる。