10:45 〜 11:00
[PCG22-06] ミリ波におけるダストの吸収と散乱のモデル
★招待講演
キーワード:原始惑星系円盤、ダスト、光学特性、ALMA
近年のALMAの活躍によりミリ・サブミリ波における原始惑星系円盤の理解が飛躍的に進んでいる. ALMAによって得られた原始惑星系円盤の観測結果を解釈する際, 重要な役割を果たすのがダストの吸収・散乱特性である. 例えば, ダストの吸収特性は原始惑星系円盤のダスト質量を推定する際に利用される. ダストによるミリ波の散乱は, ALMAによって明らかになった円盤のミリ波偏波パターンを説明する有力なモデルとなっている. このように, ダストの吸収・散乱過程は, 円盤の観測結果の解釈に関わる重要な素過程であると言える. 逆に, ダストの吸収・散乱特性を理解することで, 円盤の質量やダストの性質に対して, より強い観測的制約が与えられることが予想される. 本講演では, ダストのサイズ, 構造, そして組成がミリ波の吸収・散乱特性に与える影響について, 最新の数値計算や室内実験の結果をもとに紹介する. さらに, これらの結果を踏まえて, ALMAによる円盤観測の結果の解釈や今後の課題について議論する.
本講演ではまず, レイリー領域において, ダストの構造や組成が吸収不透明度に与える影響を議論する. レイリー領域におけるダスト・アグリゲイトの吸収不透明度は, 同じ質量で同じ誘電率を持つ一様球の吸収不透明度に比べて大きくなる傾向があることが知られている. こうした超過吸収効果は, 正にアグリゲイトの構造や形状に起因するものである. 我々はアグリゲイト構造がもたらすこの超過吸収効果の度合いを定量的に見積もるため, アグリゲイトのミリ波における吸収不透明度をT-Matrix法を用いた数値計算によって求めた. その結果, アグリゲイトのミリ波における吸収不透明度は, シリケイト・ダストの場合は約2倍, アモルファス・カーボン・ダストの場合は約4倍, Mie理論から予測される吸収不透明度より大きくなることが明らかになった. また, こうしたアグリゲイトの超過吸収効果を模すことのできる近似的な吸収モデルについても紹介する. 続いて, ダストの散乱特性について議論する. ダストによる散乱過程は, これまで可視光・近赤外線といった波長で盛んに議論されてきた. そこで, 本講演では我々の数値計算結果に加え, 原始惑星系円盤やデブリ円盤の可視光・赤外線観測や最新の室内実験から得られた知見をまとめ, 円盤ダストの散乱特性を考察する. そして, これらがALMAによって観測されている散乱由来の偏波の解釈に与えうる影響を議論する.
本講演ではまず, レイリー領域において, ダストの構造や組成が吸収不透明度に与える影響を議論する. レイリー領域におけるダスト・アグリゲイトの吸収不透明度は, 同じ質量で同じ誘電率を持つ一様球の吸収不透明度に比べて大きくなる傾向があることが知られている. こうした超過吸収効果は, 正にアグリゲイトの構造や形状に起因するものである. 我々はアグリゲイト構造がもたらすこの超過吸収効果の度合いを定量的に見積もるため, アグリゲイトのミリ波における吸収不透明度をT-Matrix法を用いた数値計算によって求めた. その結果, アグリゲイトのミリ波における吸収不透明度は, シリケイト・ダストの場合は約2倍, アモルファス・カーボン・ダストの場合は約4倍, Mie理論から予測される吸収不透明度より大きくなることが明らかになった. また, こうしたアグリゲイトの超過吸収効果を模すことのできる近似的な吸収モデルについても紹介する. 続いて, ダストの散乱特性について議論する. ダストによる散乱過程は, これまで可視光・近赤外線といった波長で盛んに議論されてきた. そこで, 本講演では我々の数値計算結果に加え, 原始惑星系円盤やデブリ円盤の可視光・赤外線観測や最新の室内実験から得られた知見をまとめ, 円盤ダストの散乱特性を考察する. そして, これらがALMAによって観測されている散乱由来の偏波の解釈に与えうる影響を議論する.