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[PCG23-06] すばる望遠鏡補償光学系で観測された木星近赤外極冠オーロラの脈動特性
キーワード:木星、オーロラ、すばる望遠鏡
本研究ではJunoの太陽風観測キャンペーン期間である2016年5月に、すばる望遠鏡補償光学系およびH3+ narrow-band filter(中心波長3.4µm)を用いて木星赤外オーロラのイメージング観測を行い、その明滅特性を明らかにした。木星オーロラはこれまでの紫外観測や赤外観測によってその分布や発光強度が明らかにされ、磁気圏ダイナミクスを知るための重要な手がかりとなっている。木星オーロラは紫外と赤外でおよそ同じ空間分布をもつが、必ずしも同じ構造が見えるわけではない [Radioti et al., 2013]。紫外オーロラは磁気圏から降り込む電子が木星H2大気と衝突して起こる直接励起による発光であり、電子の降りこみに対する応答は早く、10-2秒程度である。極冠域では紫外の数秒-数分スケールの周期的な変化が観測されている。一方赤外オーロラは電子の降下およびイオン化学によってH3+が生成され、さらに大気と降下粒子の衝突やジュール加熱等でH3+が熱励起されることにより起こる発光である。その過程の中でも発光タイムスケールを大きく左右するのがイオン化学反応であり、そのタイムスケールは10-2-104秒と見積もられている[Badman et al., 2014]。電子降りこみに対する応答は紫外発光に比べてゆるやかであると考えられる。これまでの赤外オーロラの撮像観測は、紫外オーロラの観測に比べて時間・空間分解能ともに粗いものであったため、30 分よりも短いタイムスケールの赤外オーロラの変動の研究成果はほとんどなく、主に90 分以上の長時間変動が報告されている[e.g., Stallard et al., 2016]。しかし紫外イメージをH3+のライフタイム分だけ積分すると、赤外イメージと同様の構造を示すとの報告があり[Stallard et al., 2016]、赤外オーロラにも詳細な構造や短い時間内の発光強度の変化が存在する可能性がある。
本発表では、2016年5月26日にハワイ・マウナケア山頂のすばる望遠鏡赤外分光撮像装置IRCSで木星赤外H3+オーロラの観測を行った結果を報告する。補償光学装置AO188 を用いることにより、これまでの赤外オーロラ撮像よりも高い空間分解能(~0.1 秒角)を実現することができた点が本研究の大きな特徴である。narrow-band filterを用いて、H3+イオンの輝線が含まれる3.4 um 付近の波長域での撮像を行った。時間分解能(木星フレームの取得間隔)は45-110 秒であった。これほどの高い分解能および短い時間間隔での木星赤外撮像は初の試みであり、赤外オーロラの微細構造や時間変化を観測することができた。メインオーバル、イオのフットプリント、そして極冠域に複数のパッチ状の発光構造が確認された。メインオーバルのdawn側(System3経度~190-210°)は明るく、平均発光強度の~20%の振幅、~20分の時間スケールで変動していた。一方dusk側(System3経度~160-180°、紫外で「discontinuity」として観測される場所)はやや暗く、その発光強度は一定であった。またVIP4 磁場モデルに基づく磁気座標を重ねた結果、メインオーバルの位置がVIP4 磁場モデルの30Rj(図a中緑色の線)に対応していることが確認された。2-3個のパッチ状構造がメインオーバルに沿って並んでおり、その発光強度をそれぞれ異なる時間スケール(~10-17分)で変化させながら準共回転していた。中でも緯度~62-65°、System3経度~172-182°に現れたパッチ状発光(図a中に青色で囲まれた領域)は明瞭に明滅しており、その振幅は平均発光強度の~35%であった。またLomb-Scargle法を用いた解析により、有意な~10分の明滅周期性が明らかになった。図bはそのパッチの発光強度の時間変動、図cは直線フィッティング(赤破線)による残差、図dは図cのピリオドグラムを95%(破線)と99%(破点線)の有意水準と共に表したものである。木星赤外オーロラに、これまで知られていなかった短いタイムスケールの変動が存在することが示された。熱圏の温度変化やH3+輸送の時定数は、104-105秒と長いことから、今回観測された赤外の明滅発光変動は、オーロラ電子降り込みによるH3+の密度変化に応答したものと考えられる。本発表では詳細な解析結果と、オーロラ発光モデルを用いて、発光強度変動をもたらした降りこみ粒子のエネルギーについて考察した結果を述べる。
本発表では、2016年5月26日にハワイ・マウナケア山頂のすばる望遠鏡赤外分光撮像装置IRCSで木星赤外H3+オーロラの観測を行った結果を報告する。補償光学装置AO188 を用いることにより、これまでの赤外オーロラ撮像よりも高い空間分解能(~0.1 秒角)を実現することができた点が本研究の大きな特徴である。narrow-band filterを用いて、H3+イオンの輝線が含まれる3.4 um 付近の波長域での撮像を行った。時間分解能(木星フレームの取得間隔)は45-110 秒であった。これほどの高い分解能および短い時間間隔での木星赤外撮像は初の試みであり、赤外オーロラの微細構造や時間変化を観測することができた。メインオーバル、イオのフットプリント、そして極冠域に複数のパッチ状の発光構造が確認された。メインオーバルのdawn側(System3経度~190-210°)は明るく、平均発光強度の~20%の振幅、~20分の時間スケールで変動していた。一方dusk側(System3経度~160-180°、紫外で「discontinuity」として観測される場所)はやや暗く、その発光強度は一定であった。またVIP4 磁場モデルに基づく磁気座標を重ねた結果、メインオーバルの位置がVIP4 磁場モデルの30Rj(図a中緑色の線)に対応していることが確認された。2-3個のパッチ状構造がメインオーバルに沿って並んでおり、その発光強度をそれぞれ異なる時間スケール(~10-17分)で変化させながら準共回転していた。中でも緯度~62-65°、System3経度~172-182°に現れたパッチ状発光(図a中に青色で囲まれた領域)は明瞭に明滅しており、その振幅は平均発光強度の~35%であった。またLomb-Scargle法を用いた解析により、有意な~10分の明滅周期性が明らかになった。図bはそのパッチの発光強度の時間変動、図cは直線フィッティング(赤破線)による残差、図dは図cのピリオドグラムを95%(破線)と99%(破点線)の有意水準と共に表したものである。木星赤外オーロラに、これまで知られていなかった短いタイムスケールの変動が存在することが示された。熱圏の温度変化やH3+輸送の時定数は、104-105秒と長いことから、今回観測された赤外の明滅発光変動は、オーロラ電子降り込みによるH3+の密度変化に応答したものと考えられる。本発表では詳細な解析結果と、オーロラ発光モデルを用いて、発光強度変動をもたらした降りこみ粒子のエネルギーについて考察した結果を述べる。