日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG23] 惑星大気圏・電磁圏

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールA(CH-A) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:関 華奈子(東京大学大学院理学系研究科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科、共同)、前澤 裕之(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)、座長:寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科)、今村 剛(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

14:30 〜 14:45

[PCG23-10] 系外惑星の大気の流体力学的散逸~中心星近傍を周回する溶融岩石惑星の持つミネラル大気への理論的検討~

*伊藤 祐一1生駒 大洋1 (1.東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)

キーワード:大気散逸、系外惑星

現在、2地球半径以下の惑星半径を持つ系外惑星は1000個以上発見されている。それらの約半数は、岩石の融点温度を超えた放射平衡温度を持つほど中心星近傍(0.1AU以下)に存在している。それらがCoRoT-7 bに代表されるような岩石惑星であるなら、中心星近傍の岩石惑星はマグマ由来の蒸気(NaやO, Si, Mg, SiOなど)で構成されたミネラル大気と呼ばれる大気を持つと考えられている(Schaefer & Fegley 2009, Ito et al.2015など)。また、最近の観測では、質量の大規模流出が起きている中心星近傍の岩石惑星の存在を示唆するダストの尾を持つ系外惑星の検出が報告されている(Rappaport et al. 2012 など)。しかしながら、そのような大規模な質量の流出が起こるならば、今まで見つかっているスーパーアースサイズ(惑星半径は2地球半径程度、惑星質量は10地球質量程度)の中心星近傍岩石惑星がどうして存在しているのかは不明である。これまで、中心星近傍のガス惑星(ホットジュピター)における水素大気の散逸過程の推定に向けた流体シミュレーションは盛んに行われている一方、中心星近傍の岩石惑星におけるミネラル大気の散逸に対する理論的検討は行われていない。

本研究では、若い中心星から紫外線を照射されている環境にある中心星近傍(0.02AU)の岩石惑星の持つミネラル大気の散逸に着目する。その為に、紫外線を照射されたミネラル大気での放射による加熱・冷却、光・熱化学反応を考慮した1次元の流体モデルを構築した。この時、大気成分として、Na, O, Si, Mg及びそれらのイオンを仮定した。その流体モデルを用いて、大気の散逸率及び大気の組成分布を、質量の異なる岩石惑星において推定した。本結果は、その散逸が流体力学的散逸であることと、散逸率が惑星重力に大きく依存することを示した。 10地球質量を持つスーパーアースの場合、大気中のエネルギー収支として、照射された紫外線のエネルギーのほとんどがNa, Mgなどのアルカリ(土類)金属の放射として捨てられ、その微小分が大気運動を駆動していた。一方、0.1地球質量の惑星の場合、重力が弱いために、可視光・遠紫外線が効率的に大気運動を駆動していた。結果的に、10地球質量の惑星と比べ0.1地球質量の惑星での散逸率に4桁の違いが生じる。本検討は、中心星近傍岩石惑星はミネラル大気の流体力学的散逸によって、0.1地球質量の惑星を選択的に蒸発してしまい、1地球質量以上の惑星はそれを経ても存在できることを明らかにした。