日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] Dynamics in magnetosphere and ionosphere

2018年5月20日(日) 09:00 〜 10:30 303 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:田中 良昌(国立極地研究所)、堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波研究所、共同)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、座長:新堀 敦樹(ISEE, Nagoya Univ.)、佐藤 由佳(極地研究所)

09:30 〜 09:45

[PEM15-03] トランスポーラーアーク出現時に発生するオーロラオーバルの部分的増光について

*小原 隆博1 (1.東北大学 惑星プラズマ大気研究センター)

キーワード:トランスポーラアーク、オーバル増光

北向きIMF時に於いて, IMF Byのpolarityの反転によって, アークがオーロラオーバルから分離し, 極冠域に張り出して行く事が, 確認されている. IMF Byの反転は, Transpolar Arc が生成される一つの原因と考えられているが, 小原他(GRL,1988)では, 移動しているArcが消失する少し前のタイミングから, Transpolar Arcの付け根付近のオーバルが増光する事例が紹介されている.
IMAGE衛星のデータの中に, 数十例のTranspolar Arcが識別されたが, そのほとんどが, 朝夕方向に移動していた. このTranspolar Arcの動きはIMF Byの変化と関係しており, 北半球における観測では, IMF Byがプラスになると夕方側に向かって動き, IMF Byがマイナスになると朝側に向かって移動していた. そして, その後, 暫くして, 夜側のオーバルの一部に増光が見られたが, 増光は, アークの運動の向きにかかわらず, 移動方向の後方のオーバルで起こっていた. 即ち, IMF By > 0 の時は, アークの朝方に, IMF By < 0 の時は, アークの夕方側にて, オーバルの増光が確認された.
田中他(2004)によるTranspolar ArcのMHDシミュレーションでは, IMF Byの反転がプラズマシートの傾斜を逆転させ, その結果, プラズマシートの折れ曲がり構造が作られた. そして, この過程で, 昼夜を結ぶ子午面に対して,古いマージングセル領域と反対側に出来た新しいマージングセル領域で,開いた磁力線が新しく生成され, これら磁力線は極冠域に侵入して行く. 古いマージングセルの夜側にあるオーバルの領域では, 両半球から移動して来た開いた磁力線がマージングを起こし閉じた磁力線になる. 古いマージングセルのオーバル領域に作られた閉じた磁力線は, 通常であれば, 昼側に戻って行くが, 新しいマージングセルで新たに生成された閉じた磁力線によって, 昼側に戻る運動が阻止される. これは, 新マージングセルのオーバル領域で作られた閉じた磁力線は, 古いセルの閉じた磁力線と逆方向に進む事が, 求められているからである. そして, 行き場を失いオーバルに蓄積された閉じた磁力線群は, オーバルからはみ出す形で, 高緯度の極冠域に進出して行き, Transpolar Arcが形成されるとしている.
新しいマージングセル領域では, 継続して閉じた磁力線が生成されている. これは, プラズマシートにプラズマとエネルギーが供給され続けていると捉える事が出来る.昼側磁気圏から多くの磁気フラックスが極冠域を経由し, プラズマシートに供給され, 程なく, サブストームを発生させる事になる. IMAGE衛星が見たオーロラオーバルの増光は, 以上のシナリオで説明できそうである.