[PEM15-P13] ロングイヤービン・オーロライメージング分光器により観測されたオーロラ赤緑強度比から推定された降下電子エネルギー変動
今回我々はロングイヤービン(地理緯度:75.2°、地理軽度:16.04°、磁気緯度82.2°)におけるオーロラスペクトログラフ(ASG)のデータ解析から、2012年1月24日の活発なオーロライベントにおける降下電子エネルギーを見積もった結果を報告する。
オーロラ発光を引き起こす降下電子のエネルギーは主に10eV~30keVにわたり、エネルギーが高い降下電子は相対的に低高度まで侵入する[Rees 1989]。代表的なオーロラ発光であるO557.7nmとO630nmを比較すると、630nmの発光は558nmに比べて高高度で見られる。Rees and Luckey [1974]はこの性質を利用して、630nmと558nmまたはN2+427.8nm発光と降下電子エネルギーの関係を明らかにした。磁気圏から電離圏に降下する電子は、沿磁力線加速や電離圏のオーロラ発光やオーロラの移動に関する情報を多く有しており、その降下電子の特性を定量的に知ることは重要である。電離圏への降下電子エネルギーは、これまで主に衛星やサウンディングロケットに搭載された機器により観測されてきたが、降下電子の2次元分布が分からなかったり、長期間継続観測が困難であるという問題があった。地上からのオーロラ多波長観測から降下電子エネルギーやフラックスが推定できば、降下電子エネルギーの2次元分布や長期データに基づく統計解析への応用が期待できる。そこで本研究では、ロングイヤービンに設置されているオーロラスペクトログラフによって得られた557.7nmと630nm発光の比から降下電子エネルギーを見積もる手法を開発した。
オーロラスペクトログラフは、魚眼レンズ、グリズム、冷却CCDカメラから構成されており、波長分解能は約2nm、観測可能な波長範囲は420nm-730nmである。また、磁気南北方向には180°の視野を持っており、磁気南北方向の空間分解能は水平付近で0.36°、天頂付近で0.98°となっている[Taguchi et al., 2002]。2000年12月から現在まで稼働しているオーロラスペクトログラフには、2007年12月に移設に伴うアクリルドームの交換を含むアクリルドームの変色による波長対透過率や、CCDカメラの感度に経年変化があると予想された。そこで本研究ではその補正を行った。補正には各波長毎の絶対強度が分かっている分光標準星としてカペラのオーロラスペクトログラフ観測データを用いた。この分光標準星の557.7nmと630nmデータによる補正を2010年12月から2012年1月までで全天に雲や月が存在しない5つの画像データで行うことで、機器固有の波長感度特性の変化を2.1%の相対誤差の精度で求めた。そして、補正したオーロラ分光データから557.7nmと630nmオーロラ強度比を導出し、Rees and Luckey [1974]のモデルから降下電子のエネルギーを求めた。
この解析手法を2012年1月24日(UT)の活発なオーロライベントに応用した結果、エネルギー範囲0.08keV-1.2keVの降下電子が15:00-16:30(UT)に存在したことを明らかにした。1.2keVの比較的高いエネルギーを持った降下電子はオーロラアークの中心付近に、そして0.08keVの比較的低いエネルギーを持った降下電子オーロラアークの側面付近に存在した。この手法を応用することで、およそ16年分あるオーロラスペクトログラフデータを用いた解析から、降下電子の長期変動が明らかになることが期待される。また、N2+428nmなどの他の波長を組み合わせる事によって、フラックス等のより定量的なリモートセンシングも可能である。
今後は、機器固有の波長感度特性の変化をより詳しく解析することを目標として、カペラ以外の分光標準星としてベガ、アークトゥルスのオーロラスペクトログラフ観測データを使用する予定である。そして同時に、これらの分光標準星のデータを2010年から2016年に渡る期間で解析することで、より長期的な波長感度特性の変化を見積もる解析も行う。そして、今回代表的なオーロラ発光であるO557.7nmとO630.0nmを使用して解析を行ったが、N2+427.8nmを使用して同様な解析を行う予定である。
オーロラ発光を引き起こす降下電子のエネルギーは主に10eV~30keVにわたり、エネルギーが高い降下電子は相対的に低高度まで侵入する[Rees 1989]。代表的なオーロラ発光であるO557.7nmとO630nmを比較すると、630nmの発光は558nmに比べて高高度で見られる。Rees and Luckey [1974]はこの性質を利用して、630nmと558nmまたはN2+427.8nm発光と降下電子エネルギーの関係を明らかにした。磁気圏から電離圏に降下する電子は、沿磁力線加速や電離圏のオーロラ発光やオーロラの移動に関する情報を多く有しており、その降下電子の特性を定量的に知ることは重要である。電離圏への降下電子エネルギーは、これまで主に衛星やサウンディングロケットに搭載された機器により観測されてきたが、降下電子の2次元分布が分からなかったり、長期間継続観測が困難であるという問題があった。地上からのオーロラ多波長観測から降下電子エネルギーやフラックスが推定できば、降下電子エネルギーの2次元分布や長期データに基づく統計解析への応用が期待できる。そこで本研究では、ロングイヤービンに設置されているオーロラスペクトログラフによって得られた557.7nmと630nm発光の比から降下電子エネルギーを見積もる手法を開発した。
オーロラスペクトログラフは、魚眼レンズ、グリズム、冷却CCDカメラから構成されており、波長分解能は約2nm、観測可能な波長範囲は420nm-730nmである。また、磁気南北方向には180°の視野を持っており、磁気南北方向の空間分解能は水平付近で0.36°、天頂付近で0.98°となっている[Taguchi et al., 2002]。2000年12月から現在まで稼働しているオーロラスペクトログラフには、2007年12月に移設に伴うアクリルドームの交換を含むアクリルドームの変色による波長対透過率や、CCDカメラの感度に経年変化があると予想された。そこで本研究ではその補正を行った。補正には各波長毎の絶対強度が分かっている分光標準星としてカペラのオーロラスペクトログラフ観測データを用いた。この分光標準星の557.7nmと630nmデータによる補正を2010年12月から2012年1月までで全天に雲や月が存在しない5つの画像データで行うことで、機器固有の波長感度特性の変化を2.1%の相対誤差の精度で求めた。そして、補正したオーロラ分光データから557.7nmと630nmオーロラ強度比を導出し、Rees and Luckey [1974]のモデルから降下電子のエネルギーを求めた。
この解析手法を2012年1月24日(UT)の活発なオーロライベントに応用した結果、エネルギー範囲0.08keV-1.2keVの降下電子が15:00-16:30(UT)に存在したことを明らかにした。1.2keVの比較的高いエネルギーを持った降下電子はオーロラアークの中心付近に、そして0.08keVの比較的低いエネルギーを持った降下電子オーロラアークの側面付近に存在した。この手法を応用することで、およそ16年分あるオーロラスペクトログラフデータを用いた解析から、降下電子の長期変動が明らかになることが期待される。また、N2+428nmなどの他の波長を組み合わせる事によって、フラックス等のより定量的なリモートセンシングも可能である。
今後は、機器固有の波長感度特性の変化をより詳しく解析することを目標として、カペラ以外の分光標準星としてベガ、アークトゥルスのオーロラスペクトログラフ観測データを使用する予定である。そして同時に、これらの分光標準星のデータを2010年から2016年に渡る期間で解析することで、より長期的な波長感度特性の変化を見積もる解析も行う。そして、今回代表的なオーロラ発光であるO557.7nmとO630.0nmを使用して解析を行ったが、N2+427.8nmを使用して同様な解析を行う予定である。