日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2018年5月23日(水) 10:45 〜 12:15 304 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部、共同)、中村 匡(福井県立大学)、座長:中村 匡(福井県立大学)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)

12:00 〜 12:15

[PEM17-12] 重力場のなかでのプランク分布

*中村 匡1 (1.福井県立大学)

キーワード:重力場、相対論熱力学、プランク分布

重力場のもとでの空洞輻射を考察した。相対論的熱力学の知見によると,一般の重力場に対しては熱平衡状態は存在しないが,時間的なキリングベクトルがある場合は,これに沿って運動する物体は熱平衡になり得ることが知られている。しかし,ここで光子の熱平衡分布を考える場合,重力による red/blue shift のために,ひとつの光子の波長・振動数が場所に依存するので,普通の振動数ωを使って,プランク分布を計算することはできない。

本研究では,相対論熱力学の観点から,キリングベクトルに沿った保存量をもとにして熱平衡状態を定義することにより,このような重力場のもとでのプランク分布を求める手法を考えた。もっとも簡単な例として一様加速する空洞を仮定し,これに乗った系(リンドラー系)での固有関数展開によって,光子を定義する。この場合,エネルギーに対応するものはローレンツブーストに対応する4次元角運動量(リンドラーエネルギー)であり,光子の集団である光子気体に対して角運動量の次元をもつ温度が定義される。

得られた分布は,予想されるようにリンドラーエネルギーにもとづくプランク分布になるが,平坦な空間でのプランク分布とちがうのは,光子気体の熱容量が境界の位置によるということである。境界がリンドラー座標の地平線に近づくほど熱容量は増大し,地平線では無限大に発散する。これは地平線に近づくほど blue shift により,同じエネルギー(リンドラーエネルギー)幅にある状態数が増大するということに基づく。この計算は平坦な空間にもとづいているが,一般のキリングベクトルのある重力場でも局所的には同様にあつかうことができる。したがって,ブラックホールや中性子星など周辺の強い重力場の中での熱輻射には同じ性質があるはずである。

平坦な空間のキリングベクトルは10の独立したものがあることが知られている。この中でリンドラー系の時間ベクトルに対応するものは,保存量が純粋な角運動量に対応するという,相対論的熱力学の観点からは特殊なものになる。一般の場合はローレンツブーストと,それに垂直な方向のローレンツブーストの重ねあわせになるので,事情は複雑になる。講演ではこの計算についてもふれる。