日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM18] 大気圏・電離圏

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)

[PEM18-P01] 地デジ放送波を用いた水蒸気量観測の現状

*川村 誠治1花土 弘1纐纈 丈晴1 (1.国立研究開発法人 情報通信研究機構)

キーワード:水蒸気、地デジ、伝搬遅延

情報通信研究機構では、地上デジタル放送波の伝搬遅延を用いて地表面付近の水蒸気量を推定する手法の研究開発を進めている。主に水蒸気量変化に起因する伝搬遅延変動を精密に測定し、データ同化によって数値予報モデルの予報精度を向上させることを目標としている。水蒸気は雨粒としてレーダーで観測される前の水であり、これを精密に測定することで局地的大雨等の時空間スケールの小さな現象の予測リードタイムをより長くできる可能性があると期待される。これまでに、反射法(直達波と反射波の位相差から観測地点と反射体の間の伝搬遅延変動を測定する手法)により妥当な水蒸気量推定ができていることが示されている[1]。
本発表では、この手法の観測展開の現状について報告する。マルチパラメータ・フェーズドアレイレーダー(MP-PAWR)が2017年12月に埼玉大学に設置された。このレーダーによる降雨観測エリア内に水蒸気観測を目的として本観測の展開を計画している。2018年2月現在3地点で観測を開始しており、8地点で試験観測が終わっている。基本的に全ての地点で東京スカイツリーからの電波を受信するが、埼玉大学の近くにはテレビ埼玉の電波塔があり、この電波を利用して東京スカイツリーとは別の基線を用いた観測も可能と考えている。観測装置は主にPCとソフトウェア無線デバイスからなっており、これら全てを400×500×250 mmの屋外用キャビネットに組込んで100 VのAC電源1本で運用できるようにしている。別途用意する市販の地デジ用アンテナからの信号を取り込んで観測を実施する。

[1] Kawamura, S., et al. (2017), Water vapor estimation using digital terrestrial broadcasting waves, Radio Sci., vol.52, pp. 367-377, doi:10.1002/2016RS006191.