日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM18] 大気圏・電離圏

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)

[PEM18-P05] 昭和基地上空中層大気における一酸化窒素・オゾンと太陽陽子イベントの関係

*石島 陸1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

名古屋大学宇宙地球環境研究所ミリ波帯観測グループではこれまで昭和基地における中層大気における一酸化窒素(NO)と高エネルギー粒子の振り込み(Energetic Particle Precipitation: EPP)関係について論じてきた。またNOの存在によってオゾン(O3)の破壊が進むことは知られている。そこで本研究においては、2012年以降に昭和基地で得られたミリ波スペクトルデータからNOに加えてO3について2012-2016年の太陽陽子イベントとの関係について調べた。ここでのイベントはNOAA SPACE ENVIRONMENT SERVICES CENTER から入手した10MeV以上のプロトンフラックスが1000pfuを超えるイベントを指し、期間中に該当するのは5回であったが、このうちミリ波の観測データが取得されていたのは2012年1月24日・2013年5月23日・2015年6月21日に最大値が確認された3イベントであった。たとえば2013年のイベント時O3が70kmにおいてイベントの翌日に64%の減少を検出した。しかし同時期にNO増加は検出されず、増大したのはイベントから1週間後であった。また50-70kmにおいてプロトンイベント外でもO3は数十%という値で大きな変化が確認できるが、もっとも大きなイベントである2012年においてO3の落ち込みは60kmのときにおよそ26%と顕著でなく、2015年のイベントではO3の有意な減少は検出できなかった。一方、NOは2015年のイベント時には、イベントから3日後に増加したが、2012年のときには有意な増加は見られなかった。これらの結果から、プロトンの与える影響はO3については2013年にのみイベント発生翌日に確認されそれ以外の2イベントでは前後10日間をみても確認することができず、その一方でNOに関してはイベントの発生から数日程度過ぎてから増加が確認されるという違いがあった。これはNOとO3がプロトンイベントを通して直接関係しているかどうか疑問を呈さざるを得ない。こうした結果となった原因の1つとして昭和基地の場所そのものが考えられる。昭和基地の磁気緯度は66°であり、地磁気極から離れているため、太陽プロトンが昭和基地上空には大量には降りこまず、中間圏の大気組成には大きな影響を与えていないことが考えられる。またNOは昭和基地上空では70-105km領域において変動がみられプロトンの影響よりもむしろ磁気嵐による電子フラックスの降り込みの影響の方をより強く受けることが示されていることからも妥当と言うことができる。