[PEM18-P06] 温度・風速計測Naライダーに用いる狭帯域フィルタの透過率の最適条件
キーワード:中間圏・下部熱圏領域、ナトリウムライダー、ファラデーフィルタ、昼間観測
我々はノルウェーのトロムソにあるEIACATレーダサイトにおいて、2010年から継続的に厳冬極夜のナトリウム(Na)ライダー観測を行い、成果を上げてきた。これまで冬季の中間圏・下部熱圏領域(80-110km)に限られていたライダー観測を、高度方向に200kmまで、さらに全季節での観測への拡張を目指している。観測を夏季観測(昼間観測)に拡張するためには、背景の太陽光を排除する狭帯域磁気光学フィルタ(ファラデーフィルタ)の構築を進めている。Naライダー観測におけるファラデーフィルタの利用は1990年代に提唱され、コロラド州立大学で昼間観測に用いられたが、いまだに各国のNaライダー観測に広く使われてはいない。その大きな理由の一つは、使用する市販のNaセルでは、材質(パイレックスガラス)と高温(~190 deg C)状態のNa原子蒸気が化学反応を起こし、ガラスの茶褐色化と内部のNa蒸気密度の減少を引き起こすからである。その結果、受信光強度の低下と観測中に時々刻々と変化する不安定な透過特性(透過プロファイルの変化)を引き起こし、現在の高精度の温度・風速観測には使用することができない致命的な欠陥がある。これを解決すべく、我々は化学的に極めて安定な単結晶サファイアを材質としたNaセルを製作し、トロムソのライダーに導入する準備をしている。また、フィルタの透過率プロファイルを周波数分解能1MHz程度で計測する評価システムも構築する。
フィルタは、直交する偏光子の間に加熱したナトリウムセルを設置し、光軸方向に強磁場をかけて構築する。ファラデー回転とゼーマン効果により、選択的に589nm光が高透過率(~90%)で透過するフィルタとなる。本研究では、ライダーでのナトリウム密度・温度・風速の観測手法である3周波数法観測を前提に、観測に適した透過率を与える加熱温度、磁場強度の最適条件をシミュレーションで求めた。セル長を1cm、セル温度を約190℃とした時、磁場強度が1950Gから2500Gの広い範囲でピーク透過率90%が得られることがわかった。また、セル温度を一定値に保ち磁場強度を大きくするにつれピーク透過率の周波数幅が広がり、3周波数法での観測に適したフィルタ透過率となっていくことがわかった。本発表では、上記の計算結果の詳細と独自開発を行っているナトリウムセルに関して製作方法の詳細や磁場回路の設計などに関して報告する。
フィルタは、直交する偏光子の間に加熱したナトリウムセルを設置し、光軸方向に強磁場をかけて構築する。ファラデー回転とゼーマン効果により、選択的に589nm光が高透過率(~90%)で透過するフィルタとなる。本研究では、ライダーでのナトリウム密度・温度・風速の観測手法である3周波数法観測を前提に、観測に適した透過率を与える加熱温度、磁場強度の最適条件をシミュレーションで求めた。セル長を1cm、セル温度を約190℃とした時、磁場強度が1950Gから2500Gの広い範囲でピーク透過率90%が得られることがわかった。また、セル温度を一定値に保ち磁場強度を大きくするにつれピーク透過率の周波数幅が広がり、3周波数法での観測に適したフィルタ透過率となっていくことがわかった。本発表では、上記の計算結果の詳細と独自開発を行っているナトリウムセルに関して製作方法の詳細や磁場回路の設計などに関して報告する。