日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体研究:現状の理解と将来の展望

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:石黒 正晃(ソウル大学物理天文学科)、中本 泰史(東京工業大学)、荒川 政彦(神戸大学大学院理学研究科、共同)、安部 正真(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、座長:Ishiguro Masateru(Seoul National University)

14:30 〜 14:45

[PPS03-04] 地球接近天体2012 TC4の観測 ー Tomo-e Gozen カメラを用いた高時間分解ライトカーブ ー

*浦川 聖太郎1大澤 亮2酒向 重行2奥村 真一郎1櫻井 友里3高橋 隼4今村 和義5内藤 博之6岡崎 良7関口 朋彦7石黒 正晃8吉川 真9 (1.特定非営利活動法人日本スペースガード協会、2.東京大学、3.岡山大学、4.兵庫県立大学、5.阿南科学センター、6.なよろ市立天文台、7.北海道教育大学、8.ソウル大学、9.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:小惑星、ライトカーブ、観測、測光、スペースガード

はやぶさによるイトカワの探査から、小惑星は複数の岩塊が弱く重力で束縛されたラブルパイル構造を取ることが確認された。一方で、ひとつの岩塊そのものからなる小惑星(monolithic asteroid)も存在する。ラブルパイル小惑星を構成する最小単位の物体と言えるmonolithic asteroidの物理状態を明らかにすることは、小惑星を構成する物質や、岩塊そのものの構造的強さを知るための手がかりとなる。しかしながら、これまでmonolithic asteroidを探査した例はなく、また観測された例も非常に少ない。これは、monolithic asteroidが小さいため、非常に暗く観測が困難だからである。Monolithic asteroidの物理状態を観測的に明らかにするためには、その天体が地球接近小惑星であり、地球に非常に近づいた時にタイミングよく観測する必要がある。

2012 TC4(以下、TC4)は、2012年に発見された地球接近小惑星である。この時、地球に95000kmまで接近し、その直径が12 m -27 mであり、自転周期が12.24分と著しく短いことを示唆した。自転周期が2.2時間より短い小惑星は、高速自転小惑星と呼ばれ、その強い遠心力のためラブルパイル構造を取ることができない。従って、TC4はmonolithic asteroidであると考えられる。

TC4は2017年10月に地球に50000kmまで接近する観測好機を迎えた。2012年は発見直後の観測であったため、十分な観測体制をとることができず、直径と自転周期以外の物理情報は得られなかった。Monolithic asteroidであるTC4の表面にはレゴリス層が存在しておらず、岩塊そのものからなる表面であると考えられる。今回の回帰は、monolithic asteroidの物理状態を解明する非常に良い観測機会である。我々はTC4に対する観測キャンペーンを東京大学木曽観測所、美星スペースガードセンター、兵庫県立大学西はりま天文台、名寄市立天文台、阿南市科学センターで実施した。このうち、木曽観測所では開発中の超広視野CMOSカメラTomo-e Gozenを用いて、高時間分解のライトカーブの取得に成功した。周期解析の結果、TC4が自転周期12.2449分、歳差周期8.4731分のタンブリング運動をしている小惑星であることが明らかになった。また、ライトカーブから形状モデルの作成を行い、2.4 : 1.6 :1の三軸比であることも分かった。さらに可視・近赤外多色測光の結果から、TC4がXタイプ小惑星であることを示唆した。本講演では、観測結果に加え、自転周期から推定されるTC4の構造的強さや、スペクトルタイプから推定される構成物質について議論を行う。