日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS04] あかつきの成果と、金星科学の深化

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、山本 勝(九州大学応用力学研究所、共同)、Kevin McGouldrick(University of Colorado Boulder)

[PPS04-P02] 金星大気大循環モデルにおける雲の時間変動に対応した放射計算スキームの開発

*秋葉 丈彦1黒田 剛史1,2池田 恒平3高橋 正明3笠羽 康正1寺田 直樹1 (1.東北大学、2.情報通信研究機構、3.国立環境研究所)

キーワード:金星、GCM、雲

我々は金星大気大循環モデル(以降、VGCM)に硫酸雲の生成・消滅過程とその放射効果を加え、高度約45-70kmで全球を覆う雲層の分布とその熱的効果、およびこれらがもたらす大気運動への影響を再現し、あかつき探査機観測との比較を可能とすべく研究を進めてきた。このVGCMは、地球のGCM(CCSR/NIES/FRCGC MIROC)を出発点に(池田, 2011)、硫酸雲の凝縮/蒸発、重力沈降過程、硫酸を中心とした化学過程を組み込んだもので、赤道付近での硫酸蒸気の上昇流と雲の凝結生成、この雲の子午面循環による中・高緯度域への輸送、といった硫酸雲層の維持・循環の再現に成功してきた(Kuroda et al., to be submitted)。
このVGCMには、現実的な大気分子及び硫酸雲の放射効果を、それぞれの光学的厚さから計算するスキームが実装されている。本研究では、この機能を雲分布の変化と結合させ、雲の凝縮/蒸発と移流の効果を放射過程へ結合させた。これまではHaus and Arnold(2010)のVEX観測から得られた雲モデルの硫酸混合比を基に光学的厚さを計算したが、本研究では各時間ステップで出力される雲の粒径モード別質量混合比を基にこれを評価した。雲の生成・消滅および化学過程とその時間変動を放射計算と結合したVGCMは初である。これにより、雲の生成・消滅と輸送に伴う雲分布の変動が放射に影響を与え、これが温度分布と大気運動の変化を通してフィードバックされる一連の機構を再現しうる。

本講演では、初期状態として平衡状態の風速・気温場に観測の鉛直分布に基づいた水平一様の雲及び硫酸蒸気分布を与え、約300地球日経過後に得られた温度場・風速場の定常解について、特に東西風速場の分布、太陽放射の吸収高度、雲分布について述べる。

東西風速場の分布では、高度70-75kmの中緯度上で110 m/sのピークを持つ東西風セルが現れた。この結果はPioneer Venus観測(Walterschied et al., 1986)とよく一致しており、これまでのモデル同様、スーパーローテーションの様相が再現できている。太陽放射の吸収高度では、大気上端での太陽放射のフラックス(160 W/m2)が雲層上部で約65 %吸収され、雲層下部と下層大気でさらに約25%吸収され、地表に20 W/m2が到達した。雲層内での太陽光の吸収量の特徴は観測(Tomasko et al., 1980)と一致している。また、硫酸雲質量混合比を基に波長1.85-2.20μmでの、光学的的厚さが上から積算で1となる見かけの雲頂高度を計算すると、帯状平均で赤道付近で約67 km、中緯度で約65km、極で61kmを示した。また、SO2混合比を基に雲頂以上でのSO2の光学的厚さ分布を計算すると、紫外線観測等で見られる「Y字模様」が高度65km周辺で再現されている。

本講演では、さらに東西風フラックスの収支、鉛直安定性構造、金星雲フラックス収支等の定量的な評価結果についても評価する。