日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS05] 月の科学と探査

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:長岡 央(早稲田大学理工学術院総合研究所)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、西野 真木(名古屋大学宇宙地球環境研究所、共同)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

[PPS05-P01] 熱史計算と整合的な月ダイナモ進化モデルの構築

*兵藤 史1高橋 太1金嶋 聰1清水 久芳2綱川 秀夫3 (1.九州大学、2.東京大学地震研究所、3.東京工業大学)

キーワード:月のダイナモ、月の磁場、熱史、組成対流、内核成長

月のコアは,地球のような鉄合金からなる.月が地質学的な時間にわたって冷却されるにつれて,固体の内核はある時期に成長し始めた.地震学的観測によると,現在の内核半径は,外核半径に対して0.7から0.75であるようだ(Weber et al., 2011).現在,月には地球のような固有磁場は存在していない.その理由は,内核成長による外核の厚さの減少が,月のダイナモを維持するのに十分ではないからだろう.古磁気の測定は,少なくとも42.5億年前~35.6億年前の間,現在の地球の表面磁場と同程度の磁場が月に存在していたことを明らかにしている(Weiss et al., 2014).

過去の月のダイナモ進化の歴史を研究するために,内核の大きさを変化させる数値的ダイナモモデルを用いる.モデリング手順では,パラメータ空間でコア進化曲線をトレースするために,いくつかの無次元パラメータを適切に選択しなければならない.これを行うために,コアの化学組成をFe-FeS系と仮定し,Scheinberg et al. (2015)による2層モデルを用いて熱史を計算する.このモデルを用いて, CMB(コア-マントル境界)heat fluxとコア内の初期硫黄濃度に関してパラメータ調査を行い,地震学的観測と比較して内核の妥当な大きさをもたらすパラメータの範囲を発見する(図1).

次に,数値ダイナモシミュレーションの入力パラメータとして使用されるエクマン数とレイリー数を,内核半径の関数,あるいは外核半径に対する内核半径の比として計算する.ここでは,軽元素の放出によって引き起こされる組成対流が主にダイナモを駆動している,内核固化後の期間に焦点を当てる.よって,ICB(内核-外核境界)上のmass fluxを用いてレイリー数を定義する.ある年齢における,時間に依存したICB mass fluxは,内核半径および熱史計算から与えられる.熱史計算の指標を用いて,最終的にエクマン数とレイリー数に関するコア進化曲線を描く.現在の結果は,月ダイナモモデルを構築するための基準曲線を提供する.月のダイナモ進化を調べるために,我々はこの曲線に沿ってダイナモシミュレーションを行い,そして発表で予備調査結果を報告する.