14:00 〜 14:15
[PPS06-14] 太陽系星雲における高温凝縮物と火成CAIの同時期形成
隕石に含まれるCAI (Ca-Al-rich inclusion)は,太陽系最古の岩石であり [1],太陽組成の高温ガスから凝縮した鉱物により構成されている [e.g., 2]。ほとんどのCAIは,娘核種26Mgの過剰として検出可能な量の26Alを,その形成時に含んでいた [3]。26Alは半減期約70万年の短寿命放射性核種であり,26Al−26Mg相対年代系は,初期太陽系の年代学的研究に広く用いられている。近年二次イオン質量分析法により,CAIの高精度26Al−26Mg鉱物アイソクロンが取得され始め,個々のCAIそれぞれの,形成時の26Al/27Al初生比が明らかになってきた [e.g., 4−6]。それらのデータによれば,fluffy Type A CAIや細粒CAIといった高温凝縮物は約5.2 × 10−5の均一な26Al/27Al初生比をもつが,太陽系円盤内で溶融・再固化を経験したとされる「火成CAI」は,約5.2から4.2 × 10−5にかけた26Al/27Al初生比の広がりをもつ。この火成CAIの26Al/27Al初生比の広がりは,約20万年の形成年代幅に対応する。しかし,高温凝縮物の高精度26Al−26Mg鉱物アイソクロンの測定例は,まだ3例のみと少数であるため [4],その形成年代幅を,火成CAIと単純に比較することは難しい。本研究では,エフレモフカ・ヴィガラノ両CV3コンドライト隕石に含まれる高温凝縮物3つ(fluffy Type A CAIが2つと細粒CAIが1つ)の高精度26Al−26Mg鉱物アイソクロンデータを,二次イオン質量分析計 (CAMECA ims-1280HR,北海道大学設置)を用いて新たに取得した。
新たに得られた細粒CAIの26Al−26Mg鉱物アイソクロンは,(5.20 ± 0.17) × 10−5という26Al/27Al初生比を示した。これは,上述の高温凝縮物の文献値 [4]やCVコンドライト隕石中のCAIの全岩アイソクロンから求められたカノニカル26Al/27Al比 (約5.2 × 10−5) [7, 8]と調和的である。一方で,2つのfluffy Type A CAIはそれぞれ,(4.64 ± 0.12) × 10−5 と (4.37 ± 0.12) × 10−5という初生比を示した。これらは,他の高温凝縮物の26Al/27Al初生比およびカノニカル26Al/27Al比よりも明らかに低い。本研究により求まった,高温凝縮物の26Al/27Al初生比の (5.20 ± 0.17)から (4.37 ± 0.12) × 10−5の広がりは,18 ± 4万年の形成年代差に相当し,これまでに求められていた火成CAIの形成年代幅,約20万年と調和的である。高温凝縮物 (fluffy Type A CAIおよび細粒CAI)と火成CAIの形成年代幅の類似性から,太陽系星雲において,高温凝縮物と火成CAIがそれぞれ,カノニカル年代から約20万年間,同時期に形成し続けていたことが示唆される。以上から,太陽系誕生から約20万年間,太陽系星雲の高温ガス下において,鉱物の凝縮と溶融プロセスが繰り返し起き,種々のCAIが形成されていたことが明らかとなった。
[1] Connelly et al. (2012) Science 338, 651−655. [2] Grossman (1972) GCA 86, 597–619. [3] MacPherson et al. (1995) Meteoritics 30, 365–386. [4] MacPherson et al. (2012) EPSL 331−332, 43−54. [5] MacPherson et al. (2017) GCA 201, 65−82. [6] Kawasaki et al. (2018) GCA 221, 318−341. [7] Jacobsen et al. (2008) EPSL 272, 353−364. [8] Larsen et al. (2011) ApJL 735, L37−L43.
新たに得られた細粒CAIの26Al−26Mg鉱物アイソクロンは,(5.20 ± 0.17) × 10−5という26Al/27Al初生比を示した。これは,上述の高温凝縮物の文献値 [4]やCVコンドライト隕石中のCAIの全岩アイソクロンから求められたカノニカル26Al/27Al比 (約5.2 × 10−5) [7, 8]と調和的である。一方で,2つのfluffy Type A CAIはそれぞれ,(4.64 ± 0.12) × 10−5 と (4.37 ± 0.12) × 10−5という初生比を示した。これらは,他の高温凝縮物の26Al/27Al初生比およびカノニカル26Al/27Al比よりも明らかに低い。本研究により求まった,高温凝縮物の26Al/27Al初生比の (5.20 ± 0.17)から (4.37 ± 0.12) × 10−5の広がりは,18 ± 4万年の形成年代差に相当し,これまでに求められていた火成CAIの形成年代幅,約20万年と調和的である。高温凝縮物 (fluffy Type A CAIおよび細粒CAI)と火成CAIの形成年代幅の類似性から,太陽系星雲において,高温凝縮物と火成CAIがそれぞれ,カノニカル年代から約20万年間,同時期に形成し続けていたことが示唆される。以上から,太陽系誕生から約20万年間,太陽系星雲の高温ガス下において,鉱物の凝縮と溶融プロセスが繰り返し起き,種々のCAIが形成されていたことが明らかとなった。
[1] Connelly et al. (2012) Science 338, 651−655. [2] Grossman (1972) GCA 86, 597–619. [3] MacPherson et al. (1995) Meteoritics 30, 365–386. [4] MacPherson et al. (2012) EPSL 331−332, 43−54. [5] MacPherson et al. (2017) GCA 201, 65−82. [6] Kawasaki et al. (2018) GCA 221, 318−341. [7] Jacobsen et al. (2008) EPSL 272, 353−364. [8] Larsen et al. (2011) ApJL 735, L37−L43.