日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 太陽系物質進化

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山口 亮(国立極地研究所)、藤谷 渉(茨城大学 理学部)、癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院、共同)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:鹿山 雅裕(東北大学)

15:00 〜 15:15

[PPS06-18] 衝撃圧縮その場での時間分解XFEL回折による衝撃変成カンラン石の構造転移機構

*奥地 拓生1プレジャブ ナランゴー1尾崎 典雅2瀬戸 雄介3丹下 慶範4関根 利守2富岡 尚敬5松岡 健之2高橋 謙次郎2梅田 悠平2宮西 宏併6犬伏 雄一4籔内 俊毅7兒玉 了祐2,6 (1.岡山大学惑星物質研究所、2.大阪大学大学院工学研究科、3.神戸大学大学院理学研究科、4.高輝度光科学研究センター、5.海洋研究開発機構高知コア研究所、6.大阪大学レーザー科学研究所、7.理化学研究所放射光科学総合研究センタ-)

キーワード:フォルステライト、X線自由電子レーザー、レーザー衝撃圧縮、衝撃変成作用

45億年前の遠い昔、原始の太陽をとりまく星雲の中では、無数の小天体が衝突と合体を繰り返しながら惑星へと成長していた。小天体の衝突の後には、その物質が衝撃圧縮されたことによる痕跡が残されていた。これらの痕跡の代表的な例が、小天体を構成する鉱物の転移による高圧相の残存であり、衝撃を受けた始原的隕石からのその発見の報告例は多い(Tomioka and Miyahara, Meteorit. Planet. Sci. 2017)。特に、地球型惑星の主要鉱物の一つであるカンラン石が転移してできるリングウッダイトは頻繁に発見されているが、さらにその中に別種の高圧相が生成していたことが、ごく最近になって新たに発見された(Tomioka and Okuchi, Sci. Rep. 2017; JpGU, 2018)。これらの高圧相の生成を衝撃圧縮実験を通して実際に確認した研究は、これまでに存在しない。よって隕石中の高圧相が、実際にはどのような温度や応力の条件のもとで生成し得たのかは、いまだに定量的な解析が困難である。隕石中の高圧相を衝撃圧縮実験によって生成させることができれば、隕石中のそれらの産状と組織を新たな証拠として、その生成をもたらした天体衝突現象の規模や時間スケールを定量的に評価するための道を開くことができる。
我々は、兵庫県西播磨に設置されたX線自由電子レーザー施設・SACLAにおいて、パワーレーザーで圧縮した試料結晶の構造を表すX線回折パターンの変化を、ピコ秒に至る高い時間分解能で計測する実験を進めている(松岡・尾崎、高圧力の科学と技術、2017)。この手法により、衝撃圧縮したフォルステライト(Mg2SiO4組成のカンラン石)の単結晶の高圧相への転移のプロセスを時間分解して観察することを試みている。現在までに得られた結果から、特定の方位(a軸)に対して強く圧縮したフォルステライト単結晶の格子が、それと垂直な面(a面)をすべり面、それと垂直な方位(複数の可能性が高い)をすべり方向とする、高速の変形を引き起こして、新たな結晶構造を生成する過程を捉えることに成功した。この方位関係および回折点の位置を使って生成相の構造を制約したところ、上記のリングウッダイト中の別種の構造の生成が進行していることが示唆された。このようなマルテンサイト型の変形は原子の拡散を伴わないため、比較的低温の条件における衝撃変成においても充分にアクティブになり得る。それが実際に駆動するプロセスであることが実験的に初めて証明されたことで、高圧相を含む隕石が経験した衝撃変成作用の温度条件や応力条件を制約するための新たな手がかりを得ることができた。