16:00 〜 16:15
[PPS06-21] Camel Donga隕石中に含まれるシリカ鉱物の鉱物学的研究
キーワード:ユークライト、シリカ鉱物、トリディマイト、石英、熱変成
1. はじめに ユークライト隕石は小惑星ベスタから飛来していると考えられているHED隕石グループの一つである(e.g., McSween et al., 2011)。主要構成鉱物は輝石と斜長石であり、それらを用いた冷却速度の推定や熱変成履歴などの分類分けがこれまでの研究で行われている(e.g., Takeda & Graham, 1991)。その他、副成分鉱物としてシリカ鉱物、スピネル鉱物、アパタイトなどが存在しており、中でもシリカ鉱物は10 vol%程度含まれているものもある(Mayne et al., 2009)。しかし、ユークライト中のシリカ鉱物はこれまでの研究ではあまり着目されておらず、詳細な相同定はほとんど行われてこなかった。シリカ鉱物は準安定相を含め23種以上の多形を持つことが知られているが (例, 木原, 2001)、中でもトリディマイトは400℃以下で、六方晶系から直方晶系を経て、単斜晶系または擬直方晶系に転移する (Graetsch and Flörke, 1991)。そのため、我々はユークライト中のシリカ鉱物に着目し、これまで得られてこなかった低温領域での熱史または形成環境の情報の取得を試みてきた。これまでに3つの集積岩ユークライトと6つの非集積岩ユークライトの観察を行ってきた(e.g., Ono et al., 2017)。中でも、非集積岩ユークライト中の玄武岩質岩片に存在するシリカ鉱物の組み合わせは、熱変成度との関連性が存在することが明らかになってきた(Ono et al., 2018)。その裏付けを行うために、本研究では熱変成度がタイプ5に分類されているCamel Dongaの観察を行い、シリカ鉱物の相同定と分析を行った。
2. 試料・手法 試料はCamel Dongaユークライトの研磨厚片(22.3 mm×10.6 mm)を使用した。SEM観察によりシリカ鉱物の位置を特定し、その後、EBSD像解析と顕微ラマン分光によってシリカ鉱物の相同定を行った。シリカ鉱物の化学組成分析はFE-EPMAを用いて行った。
3. 結果・考察 輝石が大きく成長し、斜長石が短冊状に伸長した岩片が5つ(2~4 mmの岩片)、それよりもサイズが小さい岩片が複数個みられ、その他フラグメントとして見られる斜長石やシリカ鉱物などが存在していた。EBSD像解析とラマンスペクトルの結果から、岩片中には共通して石英が含まれていた。その他に含まれるシリカ鉱物の組み合わせは岩片ごとに異なる傾向を示しており、大きく3つのグループに分けられた。(1)石英のみを含む岩片、(2)石英と単斜晶系トリディマイトの集合体を含む岩片、(3)石英と直方晶系トリディマイトの集合体を含む岩片である。その他、フラグメントとして単斜晶系トリディマイトの存在が確認された。(1)の岩片中に含まれる石英は50 µm以下のものが破片状で輝石中に存在していた。(2)と(3)の集合体に含まれる石英には5 µm以下の不透明鉱物と空隙を含んでおり、トリディマイトはそれらを含んでいなかった。(2)の集合体には特殊な微小割れ目が存在しており、我々はこれまでにも似たような割れ目をシリカ鉱物の集合体中に発見しているが、(3)の集合体には含まれていなかった。このような割れ目はクリストバライトがトリディマイトに相転移する際にできたと考えられ、(2)の岩片中のシリカ集合体は相転移によってできた可能性が高い。また、トリディマイトは400℃以下の徐冷で直方晶系を経て単斜晶系に相転移することが知られていることから、(3)の集合体中の直方晶系トリディマイトは(2)の集合体のように単斜晶系トリディマイトに相転移しなかったことが示唆される。以上のように(1)~(3)の異なるシリカ鉱物組み合わせを持つ岩片はそれぞれ角レキ化する前に異なる熱史を経ている可能性が高い。Camel Dongaはモノミクト角レキ岩であり、熱変成度がタイプ5に分類されているが(Roszjar et al., 2017)、我々のこれまでの研究から、シリカ鉱物のみに着目した場合、(1)はタイプ4、(2)はタイプ5または6、(3)はタイプ2に分類されると考えられる。シリカ鉱物の組み合わせによって、岩片ごとに異なる熱履歴を経ていることが示唆されていると考えられる。
4. 結論 本研究では、Camel Dongaと呼ばれるモノミクト角礫岩eucriteを観察した。熱変成度がType 5に分類されている隕石であるが、岩片ごとにシリカ鉱物の組み合わせが異なり、タイプ2、4、5または6に分類される岩片が存在する可能性があるということがわかった。今後は輝石組成などとの整合性について検証を行なう予定である。
2. 試料・手法 試料はCamel Dongaユークライトの研磨厚片(22.3 mm×10.6 mm)を使用した。SEM観察によりシリカ鉱物の位置を特定し、その後、EBSD像解析と顕微ラマン分光によってシリカ鉱物の相同定を行った。シリカ鉱物の化学組成分析はFE-EPMAを用いて行った。
3. 結果・考察 輝石が大きく成長し、斜長石が短冊状に伸長した岩片が5つ(2~4 mmの岩片)、それよりもサイズが小さい岩片が複数個みられ、その他フラグメントとして見られる斜長石やシリカ鉱物などが存在していた。EBSD像解析とラマンスペクトルの結果から、岩片中には共通して石英が含まれていた。その他に含まれるシリカ鉱物の組み合わせは岩片ごとに異なる傾向を示しており、大きく3つのグループに分けられた。(1)石英のみを含む岩片、(2)石英と単斜晶系トリディマイトの集合体を含む岩片、(3)石英と直方晶系トリディマイトの集合体を含む岩片である。その他、フラグメントとして単斜晶系トリディマイトの存在が確認された。(1)の岩片中に含まれる石英は50 µm以下のものが破片状で輝石中に存在していた。(2)と(3)の集合体に含まれる石英には5 µm以下の不透明鉱物と空隙を含んでおり、トリディマイトはそれらを含んでいなかった。(2)の集合体には特殊な微小割れ目が存在しており、我々はこれまでにも似たような割れ目をシリカ鉱物の集合体中に発見しているが、(3)の集合体には含まれていなかった。このような割れ目はクリストバライトがトリディマイトに相転移する際にできたと考えられ、(2)の岩片中のシリカ集合体は相転移によってできた可能性が高い。また、トリディマイトは400℃以下の徐冷で直方晶系を経て単斜晶系に相転移することが知られていることから、(3)の集合体中の直方晶系トリディマイトは(2)の集合体のように単斜晶系トリディマイトに相転移しなかったことが示唆される。以上のように(1)~(3)の異なるシリカ鉱物組み合わせを持つ岩片はそれぞれ角レキ化する前に異なる熱史を経ている可能性が高い。Camel Dongaはモノミクト角レキ岩であり、熱変成度がタイプ5に分類されているが(Roszjar et al., 2017)、我々のこれまでの研究から、シリカ鉱物のみに着目した場合、(1)はタイプ4、(2)はタイプ5または6、(3)はタイプ2に分類されると考えられる。シリカ鉱物の組み合わせによって、岩片ごとに異なる熱履歴を経ていることが示唆されていると考えられる。
4. 結論 本研究では、Camel Dongaと呼ばれるモノミクト角礫岩eucriteを観察した。熱変成度がType 5に分類されている隕石であるが、岩片ごとにシリカ鉱物の組み合わせが異なり、タイプ2、4、5または6に分類される岩片が存在する可能性があるということがわかった。今後は輝石組成などとの整合性について検証を行なう予定である。