日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 太陽系物質進化

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山口 亮(国立極地研究所)、藤谷 渉(茨城大学 理学部)、癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院、共同)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:山口 亮

16:30 〜 16:45

[PPS06-23] Uranium-Lead dating and Rare Earth Element analysis of phosphates in Enriched Shergottites using NanoSIMS

*森田 拓弥1小池 みずほ1佐野 有司1高畑 直人1新原 隆史2 (1.東京大学 大気海洋研究所、2.東京大学 総合研究博物館)

キーワード:火星隕石、ウラン鉛年代、希土類元素

火星由来の隕石のうち最大のグループであるShergottiteは形成年代が165-475 Maと比較的若く(Nyquist, 2001)、火星の最近のマグマ活動を記録する現状唯一のサンプルである。Shergottiteが持つ地球化学的な情報は、火星の環境進化を探る上で非常に重要である。本研究では、局所分析法を新たに確立しShergottiteへ適用することで、従来分からなかった微小領域の化学的な同位体情報を抽出することを試みている。今回、2つのShergottites(ZagamiとRBT04261)についてリン酸塩鉱物の希土類元素を局所分析で調べた。さらに、同一鉱物グレインのウラン-鉛年代を調べ、火星の最近のマグマ活動について議論した。

まず、隕石中のリン酸塩鉱物の238U-206Pb年代測定を東大の大気海洋研究所のNanoSIMSを用いて行なった。また、207Pb-206Pb年代測定を行い、「3Dトータルウラン鉛年代(3D年代)」を求めた。Zagamiの先行研究としては、これまでに153±81 Maというリン酸塩鉱物におけるSIMS (IMS 1280) の238U-206Pb年代が報告されている(Zhou et al., 2013)。また、RBT04261においてはリン酸塩鉱物の238U-206Pb年代は報告されておらず、235±37 Maというバデレアイトでの結晶化年代が報告されているのみである(Niihara, 2011)。

さらに、本研究ではリン酸塩鉱物中の希土類元素のNanoSIMSを用いた測定法を開発し、リン酸塩鉱物中の希土類パターンを求めた。従来のエナジーフィルター法では、重希土類元素に軽希土類元素の酸化物が妨害するため、軽希土類元素に富むリン酸塩鉱物を正確に測定することが困難であった。そこで、入射および出射スリットを絞ることで、10%ピーク高でおよそ10000の質量分解能を達成し、十分に重希土類元素と軽希土類元素の酸化物のピークを分離させることに成功した(高質量分解能法)。この方法では比較的高いカウント数を維持することができ、また、希土類元素の酸化物イオンの生成率を求める必要もない。本研究では、まず、高質量分解能法で地球のアパタイト(PRAP (Sano et al., 2006), Morocco)に対して分析を行い、NanoSIMSの値とICP-MSの値を比較することで希土類元素を正確に測れるかどうかを確認した。その後、ZagamiとRBT04261中のリン酸塩鉱物に対して本手法を適用した。

得られたZagamiとRBT04261の3D年代はそれぞれ113±70 Ma, 230±50 Ma (誤差は全て2σ) であった。Zagamiにおいては先行研究と誤差の範囲内で一致する結果が得られたため、誤差が大きいものの信頼できる年代であることが分かった。また、RBT04261では、バデレアイトの結晶化年代と一致したリン酸塩鉱物の結晶化年代が得られた。本発表ではこれらの得られた年代と希土類元素について議論する。