日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 太陽系物質進化

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山口 亮(国立極地研究所)、藤谷 渉(茨城大学 理学部)、癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院、共同)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

[PPS06-P03] Fe-FeS共晶組織を用いたコンドリュールの冷却速度推定

*森 愛美1橘 省吾1,2 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻、2.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:コンドリュール、冷却速度、金属鉄、硫化鉄、共晶組織

始原隕石コンドライトの主な構成物であるコンドリュールは、溶融ケイ酸塩の急冷で形成されたと考えられているが、その形成メカニズムははっきりとわかっていない[1]。

コンドリュール形成イベントを理解するためには、熱史を制約することが重要である。組織形成実験や斑晶の累帯構造分析などによって,最高到達温度やケイ酸塩ソリダス温度付近での冷却速度(10-1000 K/h)が推定されているが[e.g., 2, 3]、ケイ酸塩ソリダスより低い温度での冷却速度はこれまであまり制約されていない。近年ではコンドリュール中のペントランダイト(Fe, Ni)9S8,ピロータイトFe1-xS離溶組織を用いて600°C以下の冷却速度の制約(~100 K/h)が試みられている [e.g., 4]。本研究では、Fe-FeS共晶組織に着目し、コンドリュールの冷却速度計の開発をおこなった。

実験では、初期物質として金属鉄とFeSの粉末をFe-FeS系の共融組成に近い組成に混合し、ガラス管に真空封入して1400℃で3時間加熱し、水中で急冷した。これを50-400µm程度に砕いて初期物質としてシリカウールに分散させ、グラファイトと硫黄の蒸発を抑えるためのFeSチップとともに再びガラス管に真空封入して1330℃で3時間加熱した。その後、25、100、500 K/hで室温まで冷却し、FE-SEMを用いて,共晶組織の観察をおこなった。

Fe-FeS系共融組成はFeSに近い組成を持つため,Fe-FeS系共晶組織はFeSをマトリクスとし,その中に金属鉄粒子が分散する組織となる.金属鉄粒子の大きさは冷却速度が大きくなるほど小さくなり,また,粒子の数密度が上がる傾向が確認された.これらの傾向を数値化するために,画像解析ソフトを用いて,個々の金属鉄粒子に対し,最近接金属鉄粒子までの距離を測定した.その結果,最近接粒子までの距離 (d) がある範囲(d–Dd ~d+Dd)に収まる金属鉄粒子に対し,その個数 (n) にd2を乗じたものが対数正規分布で近似できることがわかった。また,その分布は冷却速度に応じて異なり,それぞれの対数正規分布パラメータは、25、100、500 K/hの順に、σ2が0.31、0.20、0.14、μが1.53, 1.16, 0.18であった。Fe-FeS共晶組織を持つコンドリュールは存在し,本研究で得られた冷却速度計を適応することで,1000°Cからそれ以下の温度でのコンドリュール冷却速度が推定できるものと考えられる.



References: [1] Desch S. J. et al. (2012) Meteorit. Planet. Sci., 47, 1139–1156 [2] Tsuchiyama A. et al. (2004) GCA, 68, 653-672 [3] Hewins R. H. & Radomsky P. M. (1990), Meteoritics, 25, 309-318 [4] Schrader D. L. et al. (2016) LPSC abstract, 1180 [5] Schrader D. L. et al. (2008) GCA, 72, 6124-6140