11:15 〜 11:30
[PPS08-15] フラッシュX線を用いた凍結粘土の衝突破壊過程のその場観察
キーワード:重力支配域、瓦礫天体、衝突破壊強度、引っ張り強度
はじめに:微惑星の成長と進化において、微惑星同士の衝突は最も重要な物理素過程の一つである。衝突により発生する衝突破壊とその破片の再集積は、原始惑星の成長だけでなく、衛星や小惑星族の起源とも関連していると考えられており、衝突破壊現象の理解は重要である。衝突破壊強度は、衝突後の最大破片が元の標的質量の半分になる時に必要とされるエネルギー密度Q*(= m v 2/2M :単位質量あたりに与えられる運動エネルギー)として定義される。このQ*は、サイズが100mを超える天体では、物質強度よりも重力による破片の再集積で決まると言われており、重力支配域の衝突破壊強度(QD*)と呼ばれている。このQD*は、これまで数値シミュレーションでのみで推定されてきたが、先行研究で示されるQD*は数値シミュレーション毎に大きく異なっているため室内実験による検証が必要であった。重力支配域では天体の脱出速度が十分に大きいので、天体の脱出速度以下の速度しか持たない破片が数多く存在し、それらは再集積してラブルパイル天体を構成する。従って、室内実験の結果から破片速度を得ることができれば、再集積するラブルパイル天体の質量を推定することができる。しかしながら、破片速度分布に関する実験的研究は非常に少ない。さらに、その先行研究で求められた破片速度は、高速カメラにより撮影できる標的表面付近の破片に限定されてきた。そこで本研究では、高速カメラでは測定不可能な標的内部の速度分布を計測する手法を確立させ、その内部速度分布からQ*に制約を与えることを目的とした。
実験方法:衝突破壊実験は宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を用いて行なった。弾丸は直径7mmのポリカーボネート球を用いた。衝突速度は1.5 – 6.5 km s-1 (Q : 103 - 104 J kg-1)で変化させた。その結果、ほとんどの実験で標的はカタストロフィック破壊し、最大破片は元の標的質量の10%程度となった。標的試料には含水率が異なる直径6cmの凍結粘土球を用いた。粘土試料はベントナイトと水を3通りの質量比(100:35, 100:50, 100:80)で混合して作成した。それぞれの含水率は、25wt%、35wt%、45wt%である。粘土試料は-20°Cに冷却して、試料内の水は凍結させて用いた。含水率を変化させることで、凍結粘土の静的引張強度は1.10MPaから2.24MPaまで変化させた。試料内部の速度分布を測定するため、標的内部には直径3mmの鉄球をトレーサー粒子として単一平面上に配置した。このトレーサー粒子の運動を撮影するために3方向からフラッシュX線を照射して、その透過像をイメージングプレートに記録した。なお、撮影のタイミングは、衝突後の50μs - 20msで変化させた。内部速度分布は、トレーサー粒子の変位とその時の撮影時間から決定した。また、衝突の様子は20万コマ毎秒の速度で高速カメラを用いて撮影し、衝突点の反対点から放出される破片の速度を決定した。なお、実験用のチャンバー内は、衝突実験中は約100Paまで真空引きしている。
実験結果:実験結果の解析から、トレーサー粒子の速度ベクトルは、衝突点近傍では弾丸の進行方向と逆向きになることがわかった。一方、衝突点から標的半径程度離れると弾丸の進行方向と同じ向きとなった。速度ベクトルは衝突点近傍で最大となり、最小となるのは衝突点から一番遠い反対点ではなく中心付近であった。そのため、標的内部の速度分布は衝突点からの距離だけではなく、標的表面からの距離も関係すると考えられる。なお、鉄球速度はQの増加伴って全体的に高速となる。反対点近傍のトレーサー粒子の速度ベクトルは、最大破片が小さい場合には、それぞれが方向と大きさの異なる速度ベクトルをもっていた。しかしながら、最大破片が大きな場合は、それぞれの速度ベクトルの向きと大きさが同じであった。これは、最大破片が小さい場合、反対点の破片が独立に動くことを示している。一方、最大破片が大きな場合、最大破片が幾つかのトレーサーを内包するため、それらが一緒に動いているように見えると考えられる。
鉄球トレーサーに代表される内部速度分布は、エネルギー密度の増加に伴い高速になることがわかった。破片質量と粒子速度の関係は、領域毎に最近傍の鉄球速度を割り振ることで決めた。このようにして求まる規格化積算質量と粒子速度の関係において、規格化積算質量が0.5となるときの粒子速度を中間速度V*とする。このような定義より、V*以下の速度で半分の質量が運動し、もう半分はV*以上で運動する。このV*は、含水率によって変化しないが、空隙率によって変化することがわかった。また、このV*と天体の脱出速度Veを比較することで、重力支配域における衝突破壊強度QD*を得ることができる。V*から求まるQD*は、V*の物性依存性と同様で、含水率によって変化せず、空隙率によって変化する。空隙をもつ石膏のQD*は空隙をもたない凍結粘土の3倍となった。この結果は、Jutzi 2015におけるSPHによる数値計算の結果と整合的である。
実験方法:衝突破壊実験は宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を用いて行なった。弾丸は直径7mmのポリカーボネート球を用いた。衝突速度は1.5 – 6.5 km s-1 (Q : 103 - 104 J kg-1)で変化させた。その結果、ほとんどの実験で標的はカタストロフィック破壊し、最大破片は元の標的質量の10%程度となった。標的試料には含水率が異なる直径6cmの凍結粘土球を用いた。粘土試料はベントナイトと水を3通りの質量比(100:35, 100:50, 100:80)で混合して作成した。それぞれの含水率は、25wt%、35wt%、45wt%である。粘土試料は-20°Cに冷却して、試料内の水は凍結させて用いた。含水率を変化させることで、凍結粘土の静的引張強度は1.10MPaから2.24MPaまで変化させた。試料内部の速度分布を測定するため、標的内部には直径3mmの鉄球をトレーサー粒子として単一平面上に配置した。このトレーサー粒子の運動を撮影するために3方向からフラッシュX線を照射して、その透過像をイメージングプレートに記録した。なお、撮影のタイミングは、衝突後の50μs - 20msで変化させた。内部速度分布は、トレーサー粒子の変位とその時の撮影時間から決定した。また、衝突の様子は20万コマ毎秒の速度で高速カメラを用いて撮影し、衝突点の反対点から放出される破片の速度を決定した。なお、実験用のチャンバー内は、衝突実験中は約100Paまで真空引きしている。
実験結果:実験結果の解析から、トレーサー粒子の速度ベクトルは、衝突点近傍では弾丸の進行方向と逆向きになることがわかった。一方、衝突点から標的半径程度離れると弾丸の進行方向と同じ向きとなった。速度ベクトルは衝突点近傍で最大となり、最小となるのは衝突点から一番遠い反対点ではなく中心付近であった。そのため、標的内部の速度分布は衝突点からの距離だけではなく、標的表面からの距離も関係すると考えられる。なお、鉄球速度はQの増加伴って全体的に高速となる。反対点近傍のトレーサー粒子の速度ベクトルは、最大破片が小さい場合には、それぞれが方向と大きさの異なる速度ベクトルをもっていた。しかしながら、最大破片が大きな場合は、それぞれの速度ベクトルの向きと大きさが同じであった。これは、最大破片が小さい場合、反対点の破片が独立に動くことを示している。一方、最大破片が大きな場合、最大破片が幾つかのトレーサーを内包するため、それらが一緒に動いているように見えると考えられる。
鉄球トレーサーに代表される内部速度分布は、エネルギー密度の増加に伴い高速になることがわかった。破片質量と粒子速度の関係は、領域毎に最近傍の鉄球速度を割り振ることで決めた。このようにして求まる規格化積算質量と粒子速度の関係において、規格化積算質量が0.5となるときの粒子速度を中間速度V*とする。このような定義より、V*以下の速度で半分の質量が運動し、もう半分はV*以上で運動する。このV*は、含水率によって変化しないが、空隙率によって変化することがわかった。また、このV*と天体の脱出速度Veを比較することで、重力支配域における衝突破壊強度QD*を得ることができる。V*から求まるQD*は、V*の物性依存性と同様で、含水率によって変化せず、空隙率によって変化する。空隙をもつ石膏のQD*は空隙をもたない凍結粘土の3倍となった。この結果は、Jutzi 2015におけるSPHによる数値計算の結果と整合的である。