日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] 惑星科学

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 国際会議室(IC) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:岡本 尚也(国立研究開発法人宇宙航空開発機構 宇宙科学研究所)、黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻)、座長:細野 七月(京都大学)、岡本 尚也(千葉工大惑星探査研究センター)

12:00 〜 12:15

[PPS08-18] 衝突脱ガスと大気剥ぎ取りによる地球大気形成:後期集積天体組成の制約

*櫻庭 遥1黒川 宏之2玄田 英典2 (1.東京工業大学、2.東京工業大学地球生命研究所)

キーワード:後期天体集積、衝突脱ガス、大気剥ぎ取り

地球に存在する揮発性元素の起源を解明することは,大気や海洋, さらには生命の起源を探る上で非常に重要である. 地球大気は主に,後期天体集積による衝突脱ガスによってもたらされた揮発性元素によって形成されたと考えられている(e.g. de Niem et al. 2012).ただし, 衝突天体の組成については現時点で正確なことは分かっていない.

本研究では, 特に炭素質コンドライトに比べて地球のC/H比およびN/H比が小さいこと (e.g. Pontoppidan et al. 2014)に着目し, 後期天体集積期にこれを再現する条件を探る. 原始惑星への天体衝突における衝突脱ガスと大気剥ぎ取り(Svetsov 2000, Shuvalov 2009)について,大気組成(CO2, H2O, N2+希ガスの3成分を仮定)を考慮した大気進化を計算した.初期地球表層では,現在の地球と同様に海洋と炭素循環による炭酸塩固定の存在を仮定し,H2OやCO2の海洋・炭酸塩への分配も考慮した.衝突天体組成については,その揮発性元素含有量をパラメータとし,計算結果と現在の地球大気中の揮発性元素量を比較した.

衝突脱ガスによる大気進化では十分時間が経つと供給と損失がつりあう定常状態に近づくことが分かった.その定常量は,衝突総質量ではなく衝突天体組成に依存して変化した.特に惑星内部に取り込まれにくく,安定して大気に分配される希ガスやN2の存在量に着目すると,その獲得量は衝突天体組成に依存し,揮発性元素量が少ないほどより少量のN2, 希ガス量で定常状態に収束することが分かった.炭素質コンドライト的な揮発性成分含有量が多い衝突天体より,エンスタタイトコンドライト的な揮発性成分含有量が少ない衝突天体の場合に現在のN2存在量をよく再現できることが分かった.また講演ではC/H比およびN/H比の衝突天体組成依存性についても議論する.

[1] de Niem, D., et al. (2012) Icarus 221, 495.
[2] Pontoppidan, K.M. et al. (2014) Protostars and Planets VI , 363.
[3] Svetsov, V. (2000) Solar Syst. Res. 34, 398.
[4] Shuvalov, V. (2009) Meteoritics & Planetary Science 44, 1095.