日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] 惑星科学

2018年5月21日(月) 15:30 〜 17:00 国際会議室(IC) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:岡本 尚也(国立研究開発法人宇宙航空開発機構 宇宙科学研究所)、黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻)、座長:小南 淳子(東京工業大学 地球生命研究所)、黒川 宏之(東京工業大学 地球生命研究所)

16:15 〜 16:30

[PPS08-28] ガス集積過程後期における巨大ガス惑星による固体物質の獲得

*Shibata Sho1生駒 大洋1 (1.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:惑星形成、巨大ガス惑星、重元素

現在の木星と土星の内部構造の研究によると、それらのエンベロープは太陽組成に比べて水素やヘリウムよりも重い物質(重元素)に富んでおり、エンベロープ内の重元素量は木星で 18−39M⊕、土星で1−8M⊕と見積もられている。一方、単純な巨大ガス惑星形成モデルでは、まず、重元素からなる微惑星の集積によって固体コアが形成され、その後、周囲に存在する太陽組成(または、より重元素に枯渇した)円盤ガスの集積によって巨大ガス惑星は形成される。そこから推定されるエンベロープ内の重元素量は、木星で3M⊕以下、土星で1M⊕以下であり、上述の重元素の過剰は説明できない。先行研究は、暴走的ガス集積によって成長しつつある原始惑星の周囲の微惑星について数値的に軌道積分し、ガス集積期のフィーディング・ゾーンの拡大による微惑星の捕獲(重元素量増加)の可能性を検証した。結果として、木星に見られる重元素過剰量と整合するには林モデル円盤に比べて多量の微惑星が必要であること、木星よりも土星の方が重元素を多く獲得する傾向にあることが示された。特に、後者は内部構造モデルの推定と矛盾する。
そこで、本研究では、ガス集積の後期過程に着目し、原始惑星系円盤からのガス供給律速や、原始惑星系円盤内でのギャップ形成、周惑星円盤の形成が微惑星獲得量に及ぼす影響を、惑星周辺の密度構造をモデル化し、その中で微惑星の軌道積分を行うことで定量的に評価した。結果として、ギャップ構造は微惑星獲得量にそれほど影響を与えず、一方で周惑星円盤は獲得量を数倍増加させる効果をもたらすことがわかった。また、原始惑星の質量成長率の時間変化が木星領域と土星領域で異なるため、結果として木星の微惑星獲得量が土星と同程度に増加することがわかった。これらは、内部構造理論と惑星形成理論の矛盾を緩和する結果である。