[PPS08-P03] インドシナ半島におけるオーストラリア・アジアテクタイトイベント起源のイジェクタ堆積物
キーワード:天体衝突、衝撃変成石英、オーストラリア・アジアテクタイト
地球上の衝突クレーターや、クレーター周囲に分布するイジェクタ堆積物の野外調査は、物質的な証拠を入手する、実スケールでのクレーター・イジェクタ層を観察するという意味で、衝突の数値計算や衝突実験とは相補的な研究手法である。しかし、地球では風化、浸食、埋没、プレートの沈み込み、植生による被服などによってクレーターやイジェクタ層が消失してしまう問題があり、白亜紀末の大規模な衝突イベントに関する詳細な調査を除けば、リースクレーターやメテオクレーターなど年代が新しく比較的小規模な衝突に研究対象が限られている。
およそ79万年前に東南アジアで起きたとされるオーストラリア・アジアテクタイトイベントは衝突天体の直径が数kmに達するような大規模な衝突の中で最も年代が新しいイベントとして知られている。この衝突によって衝突地点の地殻の岩石が溶融し飛散したテクタイトは、東南アジアから南極に渡る広範囲に分布し、直径40~100km程度のクレーターを形成するような大規模な衝突であったと考えられている。年代が新しいことから物質的な証拠が多く残されていると期待され、衝突現象や、衝突と地球環境の関係を調べるうえで重要な研究対象である。しかし、50年以上に渡る探索にも拘らず衝突クレーターは未だ発見されず、謎とされてきた。またイジェクタ層もこれまで報告されていなかった。イジェクタ層は衝突地点に近い程層厚が厚くなるため、衝突地点推定のためにはイジェクタ層の分布を知る事が重要である。
我々はイジェクタ層を特定、記載し、層厚やその他の特徴の空間分布を調べることを目的にタイ東北部及びベトナム中部において野外調査を行った。これらの地域には、テクタイトを含む層厚数十cmから数mの中礫層ないし礫質シルト層と、それを覆う層厚数mの均質なシルト-細粒砂層が広く分布している。例えば、タイ・ラオス国境付近に位置するHuai Om セクションでは、基盤の白亜系赤紫色砂岩を層厚およそ2 m の中礫質シルト層と層厚およそ3 m のシルト層が覆う。砂岩や礫岩の基質部分を偏光顕微鏡下で観察したところ、小天体衝突の最も確実な証拠とされる衝撃変成石英が発見された。衝撃変成石英はユニバーサルステージを用いてラメラの方位を測定し、その角度分布を調べることで同定した。テクタイトや衝撃変成石英を含むことなどから、これらの堆積物はイジェクタ層であると考えられる。他の地点についても観察を行った結果、複数地点において礫質シルト層とシルト層から衝撃変成石英が見出だされた。礫質シルト層の層厚はタイ-ラオス国境南部付近に近いほど厚くなる傾向があり、この付近が衝突地点であることが示唆される。今後、さらに地点を増やし、イジェクタ層の層厚や衝撃変成石英の粒径を調べ、その空間分布を明らかにしていくことで衝突地点を制約していく予定である。
およそ79万年前に東南アジアで起きたとされるオーストラリア・アジアテクタイトイベントは衝突天体の直径が数kmに達するような大規模な衝突の中で最も年代が新しいイベントとして知られている。この衝突によって衝突地点の地殻の岩石が溶融し飛散したテクタイトは、東南アジアから南極に渡る広範囲に分布し、直径40~100km程度のクレーターを形成するような大規模な衝突であったと考えられている。年代が新しいことから物質的な証拠が多く残されていると期待され、衝突現象や、衝突と地球環境の関係を調べるうえで重要な研究対象である。しかし、50年以上に渡る探索にも拘らず衝突クレーターは未だ発見されず、謎とされてきた。またイジェクタ層もこれまで報告されていなかった。イジェクタ層は衝突地点に近い程層厚が厚くなるため、衝突地点推定のためにはイジェクタ層の分布を知る事が重要である。
我々はイジェクタ層を特定、記載し、層厚やその他の特徴の空間分布を調べることを目的にタイ東北部及びベトナム中部において野外調査を行った。これらの地域には、テクタイトを含む層厚数十cmから数mの中礫層ないし礫質シルト層と、それを覆う層厚数mの均質なシルト-細粒砂層が広く分布している。例えば、タイ・ラオス国境付近に位置するHuai Om セクションでは、基盤の白亜系赤紫色砂岩を層厚およそ2 m の中礫質シルト層と層厚およそ3 m のシルト層が覆う。砂岩や礫岩の基質部分を偏光顕微鏡下で観察したところ、小天体衝突の最も確実な証拠とされる衝撃変成石英が発見された。衝撃変成石英はユニバーサルステージを用いてラメラの方位を測定し、その角度分布を調べることで同定した。テクタイトや衝撃変成石英を含むことなどから、これらの堆積物はイジェクタ層であると考えられる。他の地点についても観察を行った結果、複数地点において礫質シルト層とシルト層から衝撃変成石英が見出だされた。礫質シルト層の層厚はタイ-ラオス国境南部付近に近いほど厚くなる傾向があり、この付近が衝突地点であることが示唆される。今後、さらに地点を増やし、イジェクタ層の層厚や衝撃変成石英の粒径を調べ、その空間分布を明らかにしていくことで衝突地点を制約していく予定である。