日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 宇宙における物質の形成と進化

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:橘 省吾(東京大学大学院理学系研究科宇宙惑星科学機構)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、野村 英子(東京工業大学理学院地球惑星科学系、共同)、大坪 貴文(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、座長:橘 省吾

13:45 〜 14:00

[PPS09-01] 銀河中心SgrB2(M)方向Diffuse Cloudsにおける有機物CH3CNの検出

*荒木 光典1高野 秀路2南 賢明1小山 貴裕1久世 信彦3亀谷 和久4築山 光一1 (1.東京理科大学、2.日本大学、3.上智大学、4.国立天文台)

キーワード:SgrB2、Diffuse Cloud、CH3CN、渦状椀

これまで、有機物の探査は、晩期型星の星周雲、暗黒星雲、星形成領域など主として密度の高い星間雲で行われてきた。これらの天体は星間雲の局所構造であり、より希薄な星間雲であるdiffuse cloud が量においては1~2桁多いとされている。分子雲進化においては、diffuse cloudは暗黒星雲よりも古いため、ここでの有機物の発見は有機物の進化の歴史をさかのぼることになる。ところが、そこに存在する分子は弱い衝突励起と強い放射冷却により電波を放射できず、観測は困難である。しかし、CH3CNは軸周りの回転が放射冷却を起こさないために、吸収を用いればdiffuse cloudの環境下でも観測することができる。我々はこれをHot Axis Effectとして、これまで定式化してきた[1]。今回、これまで有機物が観測されてきたdiffuse cloud [2,3]よりさらに密度の低いdiffuse cloudでのこの分子を捉えるため、野辺山宇宙電波観測所の 45 m 電波望遠鏡を用い、銀河中心SgrB2(M)方向の73 GHzに位置するCH3CNのJK = 43–33 遷移の観測を行った。その結果、CH3CNの吸収線を銀河系の渦状椀である盾・南十字腕と射手腕および銀河中心のdiffuse cloud にて観測できた。一例として、射手腕での柱密度は8×1014 cm−2となり、視線方向には星形成領域と同程度の存在量があることがわかった。今回の研究から、これまで知られていたよりもさらに密度の低いdiffuse cloudまで有機物が存在していることが明らかになった。

[1] Araki et al., Astronomical Journal, 148, 87 (2014)
[2] Muller et al., A&A, 535, 103 (2011)
[3] Thiel et al., A&A, 605, 6 (2017)