16:15 〜 16:30
[PPS09-10] 原始太陽系円盤での非晶質ケイ酸塩ダストと水蒸気との酸素同位体交換反応
キーワード:非晶質ケイ酸塩、ダスト、酸素、同位体交換、原始太陽系円盤
隕石構成物質には、酸素同位体組成の不均質があることが知られている。これは、16Oに富む始原的ケイ酸塩ダストと16Oに乏しい円盤H2Oガスとの酸素同位体交換がおこったことを示し、地球外物質の酸素同位体組成は円盤の物理的プロセスに制約を与える可能性がある。また、始原的ケイ酸塩ダストは主に非晶質だと考えられている。しかしながら、非晶質ケイ酸塩と円盤ガスとの酸素同位体交換がどの程度効率的に進行したかはほとんど理解されていない。本研究では、非晶質フォルステライトと水蒸気との酸素同位体交換反応を実験的に調べた。
同位体交換実験には、ガス導入系を備えた真空加熱炉を用い、低圧H218Oガス存在下で非晶質フォルステライト粒子 (平均粒径~80 nm) を温度803−1123 K、水蒸気圧 (PH2O)~10-2, 0.3 Paの条件で加熱した。出発物質および加熱後の試料は、フーリエ変換型赤外分光法 (JASCO FT-IR 4200)、粉末X線回折法 (Rigaku SmartLab) で分析し、また、ペレット化した後、真空炉中で焼結結晶化させ、二次イオン質量分析装置 (Cameca ims-6f) を用いてバルク酸素同位体測定をおこなった。
803−883 K、PH2O~0.3 Paにおいて、H216O中では、加熱後サンプルの赤外吸収スペクトル変化は観察されなかったのに対し、H218O中では非晶質フォルステライトの10 µm吸収帯のピーク位置が加熱時間に伴って高波長側にシフトし、このピークシフトは酸素同位体置換に起因すると考えられる。10 µm吸収帯ピークの相対シフトは、酸素同位体交換率~40%以下の場合に直線的な関係が認められた。同位体交換率の時間変化は三次元の球への拡散で説明でき、拡散支配の同位体交換速度定数として、LnD=−27.1−(162.3 ± 16.1 kJ mol-1)/RTを得た。953 K、PH2O~0.3 Paにおいて、結晶化したフォルステライトの赤外吸収ピークは加熱とともに高波長側にシフトし、0.3 PaのH216Oガスと加熱し結晶化したフォルテライトよりもブロードになった。これは、非晶質フォルステライトの酸素同位体交換と結晶化が同時に進行していることを示唆する。一方、1073 K、PH2O~0.3 Pa、2時間加熱で結晶化したフォルステライトの赤外吸収ピークは、標準酸素同位体組成をもつフォルステライトのピークと完全に一致した。結晶化が同位体交換より短い時間スケールで進行し、結晶質フォルステライトの酸素同位体交換が起こりにくい反応であることを示唆する。
803−883 K、PH2O~10-2 Paにおいて、反応速度は 883 Kおよび853 Kでほぼ等しく、水蒸気ガスの供給量が反応を律速している可能性を示唆する。一方、803 Kでは、PH2O~0.3 Paでの反応速度とほぼ一致することから、この温度条件ではガス供給でなく、大きな圧力依存性を持たない拡散が律速段階であると予想される。
実験結果をもとに、原始太陽系円盤条件における拡散律速、供給律速それぞれの場合において酸素同位体交換の時間スケールを推定した。その結果、円盤ガス存在の時間スケール (1−10 Myr) の間に、非晶質フォルステライトダストは~500 Kより高温で円盤ガスと酸素同位体交換を起こし、~500 Kより低温ではダスト固有の酸素同位体組成を保持しうることがわかった。
同位体交換実験には、ガス導入系を備えた真空加熱炉を用い、低圧H218Oガス存在下で非晶質フォルステライト粒子 (平均粒径~80 nm) を温度803−1123 K、水蒸気圧 (PH2O)~10-2, 0.3 Paの条件で加熱した。出発物質および加熱後の試料は、フーリエ変換型赤外分光法 (JASCO FT-IR 4200)、粉末X線回折法 (Rigaku SmartLab) で分析し、また、ペレット化した後、真空炉中で焼結結晶化させ、二次イオン質量分析装置 (Cameca ims-6f) を用いてバルク酸素同位体測定をおこなった。
803−883 K、PH2O~0.3 Paにおいて、H216O中では、加熱後サンプルの赤外吸収スペクトル変化は観察されなかったのに対し、H218O中では非晶質フォルステライトの10 µm吸収帯のピーク位置が加熱時間に伴って高波長側にシフトし、このピークシフトは酸素同位体置換に起因すると考えられる。10 µm吸収帯ピークの相対シフトは、酸素同位体交換率~40%以下の場合に直線的な関係が認められた。同位体交換率の時間変化は三次元の球への拡散で説明でき、拡散支配の同位体交換速度定数として、LnD=−27.1−(162.3 ± 16.1 kJ mol-1)/RTを得た。953 K、PH2O~0.3 Paにおいて、結晶化したフォルステライトの赤外吸収ピークは加熱とともに高波長側にシフトし、0.3 PaのH216Oガスと加熱し結晶化したフォルテライトよりもブロードになった。これは、非晶質フォルステライトの酸素同位体交換と結晶化が同時に進行していることを示唆する。一方、1073 K、PH2O~0.3 Pa、2時間加熱で結晶化したフォルステライトの赤外吸収ピークは、標準酸素同位体組成をもつフォルステライトのピークと完全に一致した。結晶化が同位体交換より短い時間スケールで進行し、結晶質フォルステライトの酸素同位体交換が起こりにくい反応であることを示唆する。
803−883 K、PH2O~10-2 Paにおいて、反応速度は 883 Kおよび853 Kでほぼ等しく、水蒸気ガスの供給量が反応を律速している可能性を示唆する。一方、803 Kでは、PH2O~0.3 Paでの反応速度とほぼ一致することから、この温度条件ではガス供給でなく、大きな圧力依存性を持たない拡散が律速段階であると予想される。
実験結果をもとに、原始太陽系円盤条件における拡散律速、供給律速それぞれの場合において酸素同位体交換の時間スケールを推定した。その結果、円盤ガス存在の時間スケール (1−10 Myr) の間に、非晶質フォルステライトダストは~500 Kより高温で円盤ガスと酸素同位体交換を起こし、~500 Kより低温ではダスト固有の酸素同位体組成を保持しうることがわかった。