日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] Intraslab and intraplate earthquakes

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:北 佐枝子(建築研究所)、大内 智博(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、Thomas P. Ferrand (東京大学地震研究所、共同)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)

[SCG52-P05] 紀伊半島下の地震活動とb値

広瀬 勇樹1、*北 佐枝子2須田 直樹2澁谷 拓郎3 (1.広島大学理学部、2.広島大学理学研究科、3.京都大学防災研究所)

キーワード:スラブ内地震、b値、深部低周波微動、海洋性マントル、AE、熊野酸性岩

紀伊半島下では,Yoshida et al. (2009)により紀伊半島中西部の浅部で発生する群発地震のb値が詳細に調べられてきたが,その他の地震活動のb値については詳細に調べられてこなかった.本発表では,レシーバー関数解析により推定された不連続面(Shibutani and Hirahara, 2016)と気象庁一元化震源を用い,スラブ内地震に注目しながら紀伊半島下の地震活動の特徴やb値について調べた.

 震源分布およびb値の大局的な特徴は,以下の通りである.スラブ内では熊野酸性岩の分布地域で地震活動が低調である一方,内陸地震は同地域で活発であった.また,Kita and Shibutani(2016)によるQp構造でも,熊野酸性岩の分布地域のマントルウエッジ領域は周囲と比べて高Qpになる傾向が見られていた.これらの結果は、もしかしたら熊野酸性岩が直下の地震活動様式に影響をあたえていることを示唆しているのかもしれない.また,b値は、スラブ内地震(0.82),内陸地殻内地震(1.01),マントルウエッジ内地震(1.06)の順に値が大きくなっていた.スラブ内を地殻とマントルに区分すると、海洋性地殻のb値(1.01)は,海洋性マントルのb値(0.74)と比べ大きい.

さらに詳細に検討すると,三重県の尾鷲市と大阪府の堺市を結ぶ線を境に、各々の地震活動のb値が大きく変化しているということが分かった.なおこの境界線は,地震活動の検討結果を元にMiyoshi and Ishibashi (2004; 2005)が指摘した,”スラブの断裂”もしくは”2つのスラブのオーバーラップ”の場所の西側に位置する.まず,海洋性地殻内地震と海洋性マントル内地震のb値は,境界線の東側地域(0.92,および 0.66)が西側地域(1.06および0.76)よりもそれぞれ小さくなっていた.また,マントルヴェッジ内地震においても,上記の境界線の東側地域のb値(1.28)は西側地域(0.99)に比べ高い値を示している.これは,海洋プレート内のb値の傾向とは逆の傾向を示している.なお,この三重県の尾鷲市と大阪府の堺市を結ぶ境界線上には,過去の大規模スラブ内地震の震源が2つ分布し,熊野酸性岩の北端や深部低周波微動のセグメント境界にも対応する.

 Acoustic Emissionの実験結果(Ferrand et al. 2017; Kita and Ferrand, under review)では,橄欖岩はその蛇紋岩化がすすむほど,より大きなb値となることが指摘されている.この結果を踏まえると,紀伊半島下の海洋性マントルは,上記の境界線より南西部の方が北東部より含水化が大きい一方,マントルウエッジ領域では,西側の方が東側よりも含水化が小さいことと考えられる.この解釈のうち,マントルウエッジ内の含水化様式については,尾鷲―堺境界線より西側地域が高Qp (Qp>1000) ことを指摘する減衰構造の観測事実(Kita and Shibutani, 2016)と一致する.また,Ando et al. (2012)では,微動のセグメント境界が,プレート境界でのレオロジー特性の違いが生じる場所で形成されることを数値シミュレーション結果に基づき指摘している.この指摘を踏まえると,紀伊半島下でスラブ内地震およびマントルウエッジ内地震のb値が急変する場所は,プレート境界でも構成物質やレオロジーが急変していると考えられる,そして,本研究の結果も,四国下の減衰構造解析を行ったKita and Matsubara (2016)が指摘したように,上盤側プレートの不均質性がプレート境界上で発生する微動のセグメント境界形成と密接に関わることを支持している.

 Audet and Burgmann (2014)では,上盤側およびプレート境界でのシリカの含有量が,微動セグメントの周期性を決めることを,複数の沈み込み帯での観測結果をもとに指摘している.また,西南日本では,過去のプレート境界と想定される断層における石英脈の形成が多数報告されている.本研究により見出されたマントルウエッジとスラブ内におけるb値の空間変化は,紀伊半島の西部のプレート境界では東部よりも石英脈が発達しており,スラブからのマントルウエッジへの水の流入が東部よりも起きにくいことを意味しているのかもしれない.