日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールB(CH-B) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系、共同)、波多野 恭弘(東京大学地震研究所)、座長:波多野 恭弘麻生 尚文

15:30 〜 15:45

[SCG53-31] 普遍性から導かれる最終滑り量の初期滑り速度鋭敏性

*鈴木 岳人1 (1.青山学院大学理工学部物理・数理学科)

キーワード:熱、流体圧、空隙生成、解軌道、普遍性、初期条件

震源過程に関係するthermal pressurizationとdilatancyの効果の相互作用を含んだ系を考える。支配方程式は2つの変数、正規化された滑り速度v及び空隙率\phiによって記述される。本研究では\phi-v空間での解軌道を考える。まず\phi軸が\dot{v}及び\dot{\phi}の双方のヌルクラインとなっていることに注意する。ここで上付きの点は時間微分を表す。\phi軸と曲線v=1-\beta f (\equiv g(\phi))の交点を(\phi_c,0)と表そう。ここで\betaは正定数であり、fは無次元化された空隙発展則を表す。これらの事実により\phi軸上の(0,0)から(\phi_c,0)の部分に線状アトラクタが生じることに注意する。加えて、解軌道は物理的には常にv軸から開始する。点(\phi_c, 0)を通る解軌道が点(0, v_c)を通るとし、ここでは2点(0, v_c-\delta v)と(\phi_c-\delta \phi, 0)をつなぐ解軌道を考える。ここで\delta vと\delta \phiは正の量で\delta v \ll 1及び\delta \phi \ll 1を満たす。次に\forall j, \ g^{(j)} (\phi_c)=0, g^{(n)}(\phi_c) \neq 0及びn \ge 1を仮定しよう。ここでjとnは正整数でj \le nを満たすとする。加えて、もしnが奇数(偶数)ならばg(\phi_c) >0 (<0)と仮定する。これらの仮定から、解析的に\delta \phiが\delta vの1/(n+1)乗に比例することが導かれる(Suzuki, 2017, PRE)。そして、\delta uが\delta vの1/(n+1)乗に比例することも示される。ここで\delta u =u_c-u_\inftyであり、u_cは\phi=\phi_cの時の滑り、u_\inftyは最終的な滑り量である。臨界指数が1/(n+1)であり、\betaやg(\phi_c)の詳細に依存しないこと、そしてnの増加に伴って減少することは強調されるべきである。この結果は、nが大きいほど、\phi軸上の(\phi_c,0)の近傍にアトラクタであるにもかかわらず解が近付きづらいことを意味する。なぜなら冪則により\delta \phiは\delta vより拡大され(\delta v, \delta \phi <1に注意)、かつnが大きいほどより大きく拡大されるからである。これは非線形動力学的に重要な視点である。加えて、この結果は最終的な滑り量が初期滑り速度に鋭敏であることを示し、最終的な地震の大きさの予測が難しいことをも示唆する。