日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールB(CH-B) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系、共同)、波多野 恭弘(東京大学地震研究所)、座長:波多野 恭弘麻生 尚文

16:00 〜 16:15

[SCG53-33] 状態依存摩擦則の精密化と地震核形成シミュレーションへの応用

*佐藤 大祐1安藤 亮輔1 (1.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:状態依存摩擦、破壊核形成、スロースリップと大地震

近年、一部のスロースリップが大地震の破壊核形成に対応しているという可能性が指摘された [Kato et al., 2012; Ruiz, 2014]。そこで、ゆっくり地震と大地震の関係を議論する上で、断層がどう壊れ始めるかが大きな問題となっている。
この破壊初動において、その断層運動を決める重要な摩擦法則として知られるのが状態依存摩擦則(RSF則)である。しかし、従来のRSF則の代表的な定式化(aging law & slip law)は、2つの代表的な低速摩擦実験 (velocity step testとslide-hold-slide test) と整合しない点が存在している。その結果、2つのシミュレーションから示唆される破壊核形成の描像に大きな不確定性が存在していた [Ampuero & Rubin, 2008]。さらに、その折衷案としてよく知られたcomposite law [Kato & Tullis, 2001]もまた実験と整合しない点を持つ。依然としてRSFの定式化、ひいてはそこから示唆される低速断層挙動の理解は問題を残している。
そこで本発表では、このRSFを正しく定式化し、これを用いて核形成シミュレーションを行うことで低速摩擦から示唆される破壊核形成描像を示し、そして観測から示唆される大地震をトリガーするようなスロースリップ[例えば Kato et al., 2012] について議論する。発表ではまず第一に、従来の3つの定式化と2つの代表的な実験との矛盾点を全てクリアする定式化 activation lawを手短に報告する。第二に、これを用いて先行研究 [Ampuero & Rubin, 2008] と同一の設定で破壊核形成シミュレーションを行う。結果、核形成時に生じるのはaging law的なcrack型の破壊ではなくslip law的なpulse型の破壊であることが示唆された。また、応力弱化 [Nagata et al., 2012] を取り入れると破壊核がmigrateしづらくなることが知られていたが [Kame et al., 2013] 、応力弱化だけで実験を説明しようとしないかぎり、つまり実験的にもっともらしい物性値の範囲では破壊核はmigrateすることを今回の結果は示唆している。本研究の結果は、2011年東北地震前のスロースリップの初期破壊地点への伝搬が東北地震の破壊核のマイグレーションに対応するとした先行研究 [Kato et al., 2012] の解釈と矛盾しない。今後、より精密な観測によって、pulse型の破壊核のmigrationがとらえられるかもしれない。